ESOPONO FABVLAS.477. エソポのハブラス2.10 (477.17--478.10)シシ王と、クマとのこと。 ある時ヒツジの仔一匹 クマと、シシとの二つの手に掛かって死んだ。この二つの獣(けだもの)互いに自他の勝負を争うて、朝(あした)から夕さりまで戦えども、遂にその勝ち負けが見えいで、争いくたびれて、両方(りょうぼう)に立ち分かれているところに、キツネがよそからこれを見て、二つの/中に置かれたヒツジを取って食ろうた。 注: ・類話などについて タウンゼント 141.ライオンとクマとキツネライオンとクマが、同時に同じ仔ヤギを射止めた。すると両者は、今度は獲物を独占しようと、熾烈な戦いを繰り広げた。戦いの末、両者共ひどい傷を負い、ふらふらになってぶっ倒れてしまった。この争いを遠巻きに見ていたキツネは、二匹がのびたのを確認すると、両者の真ん中に手つかずで横たわっている仔ヤギをひっ掴み、あらん限りの速さで跳ねて行った。 ライオンとクマは起きあがることも出来ずに、こう呻いた。 「ああ、忌々しい。我々は、キツネに獲物をくれてやるために闘っていたのか……」 とんびに油揚げさらわれた。 Perry147 Chambry200 TMI.K348 (Aesop) カンタベリー物語 1.p74 桝井迪夫訳 岩波文庫 今われわれはちょうど猟犬が獲物を求めるように争っている。猟犬が一日中争って、しかも得るものとては何もない。いがみあっている間に鳶がやってきてその獲物をさらってゆく、そういうわけなのさ。 こがね丸 巌谷小波・・・・黄金丸と猟犬が、一羽の雉子(きぎす)を巡り闘っている。先きのほどより、彼方の木陰に身を忍ばせ、二匹の問答を聞ゐたる、一匹の黒猫ありしが。今二匹が噬合ひはじめて、互ひに負けじと争ひたる、その間隙(すき)を見すまして、静かに忍び寄るよと見えしが、やにはに捨てたる雉子(きぎす)を咬(くわ)へて、脱兎の如く逃げ行くを、ややありて二匹は心付き。南無三してやられしと思ひしかども今更追ふても及びもせずと、雉子(きぎす)を咬(くわ)へて磚牆(ついじ)をば、越え行く猫の後姿、打ち見やりつつ茫然と、噬み合ふ嘴(くち)も開いたままなり。 注: 「磚牆(築地)」は、土塀のこと。 牆は、「片」偏に「嗇」 Ernest Griset p332 二羽の闘鶏と七面鳥闘鶏用に育てられた二羽の雄鶏が、互いの縄張りの境界で偶然出会った。猛々しい性格ゆえに、ほんの些細なことがらが、両者の闘争心に火を付けた。彼らは誇りと怒りを胸に互いに近づいていった。彼らは挑発的な態度で、そして鬨の声を上げると、すぐさま血みどろの戦いを始めた。両者とも大胆にそして機敏に戦った。彼らは互いに、深い致命的な傷を与えた。そして両者ともに、完全に消耗しきって、目が眩み、芝生の上に倒れた。この間、両者の成り行きを見守っていた七面鳥は、戦場の地へと近づいて行くと、こう言って彼らを咎め立てた。 「お隣さんたち。あなたたちの争いはなんて不条理で、なんて馬鹿げているのでしょう! これよりも間抜けなことは、最も口論好きな人々の間でも、滅多に起きることではありません。恐らくあなた方は、鬨の声を上げて、互いにその声を聞いたか、さもなくば、相手の縄張りの麦を一粒、啄ばんだかしたのでしょう。そんなことで、両者とも余生を惨めに過ごさなければならない身体になってしまったのですからね・・・・」 タウンゼント 104.ライオンとイノシシある夏の大変暑い日の事、イノシシが喉の渇きを癒そうと井戸へとやってくると、時を同じくして、ライオンもやって来た。彼らは敵意をむき出しにして、どちらが先に井戸水を飲むかと言い争い、そしてすぐに、生死を賭けた戦いが始まった。 彼らは、いよいよ激しくぶつかり合おうと、息を止めて睨み合った。と、その時、二匹は、禿タカどもが少し離れたところから、こちらを伺っているのに気が付いた。すると、どちらからともなくこう言った。 「喧嘩はヤメだ! ヤメ! さあ、仲良く水を飲もう」 Pe338 Cha203 TMI.J218.1 (Ba) |
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