ESOPONO FABVLAS.443 エソポのハブラス1.01 (443.10--444.14)オウカメと、ヒツジの譬えのこと。 ある川端にオウカメも、ヒツジも水を飲むに、オウカメは川上に居、ヒツジの仔は川裾に居たところで、かのオウカメ
このヒツジを食らわばやと思い、ヒツジのそばに近づいて言うは、「そちはなぜに水を濁らいて我が口をば汚(けが)いたぞ」と怒(いか)ったれば、ヒツジの
言うは、「我は水裾(みなすそ)に居たれば、なぜに川の上をば濁そうぞ」と、重ねてオウカメの言うは、「おのれが母(ハワ)
六か月(つき)前にも水を濁らしたれば、いかでかその罪を汝は逃りょうぞ?」 ヒツジの言うは、「そ/のと
きは未生以前(みしょういぜん)のことなれば、さらにその罪我に当たらぬ、」
またオウカメより言うは、「汝また身が野山の草を食ろうた、これまた重犯(じゅうぼん)なれば、なぜに逃(の)がそうぞ?」ヒツジ
答えて言うは、「我はまだ歳にも足らぬ若輩でござれば、草を食(は)むこともまだござない」と、重ねてオウカメ
「汝はなぜに雑言するするぞ」と大きに怒(いか)ったれば、ヒツジの言うは、「我はさらに悪口を申うさぬ、ただ咎のない謂れを申すばかりぢゃ」と、そのと
きオウカメ「所詮問答は無益(むやく)ぢゃ、なんであろうともままよ、是非におのれをば我が夕飯(ゆうめし)にしょうずる」と言うた。これをなんぞという
に、道理を育てぬ悪人に対しては善人の道理と、そのへりくだりも役に立たず、ただ権柄(けんぺい)ばかりを用(もち)ようずる儀ぢゃ。 注: ・類話などについて タウンゼント1.オオカミと仔ヒツジ ある日のこと、オオカミは、群とはぐれて迷子になった仔ヒツジと出会った。オオカミは、仔ヒツジを食ってやろうと思ったが、牙を剥いて襲いかかるばかりが 能じゃない。何か上手い理由をでっち上げて手に入れてやろうと考えた。 そこで、オオカミはこんなことを言った。 「昨年お前は、俺様にひどい悪口を言ったな!」 仔ヒツジは、声を震わせて答えた。 「誓って真実を申しますが、私はその頃、まだ生まれていませんでした。」 するとオオカミが言った。 「お前は、俺様の牧草を食べただろう!」 「いえいえ、私はまだ、草を食べたことがありません。」 するとまたしてもオオカミが言った。 「お前は、俺様の井戸の水を飲んだな!」 仔ヒツジは悲鳴を上げて答えた。 「いえ。まだ、水も飲んだことがありません。……だって、お母さんのお乳以外は、まだ何も口にしたことがないのですから……」 「ええい! もうたくさんだ! お前がなんと言おうとも、俺様が、夜飯を抜いたままでいるとでも思っているのか?」 オオカミはそう言うと、仔ヒツジに襲いかかった。 暴君は、いかなる時にも、自分に都合のよい理由を見つけるものである。 Perry155, Chanbry221, Phaedrus1.1, Babrius89, Caxston1.2, 伊曽保2.11 Houston2, Charles1, La Fontaine1.10, クルイロフ1.13, TMI.L31 (Ba) タウンゼント 44.ネコとオンドリ ネコがオンドリを捕まえた。そして、このニワトリを食べるのに、なにかもっともらしい理由はないかと考えた。そこで、ネコは、オンドリに、お前は、夜、 うるさく鳴いて、人の眠りを妨げる。といちゃもんをつけた。 すると、オンドリは、自分が鳴くのは、人が仕事に遅れないように、起こすためで、それは、人の為めなのだ。と、弁解した。 すると猫はこう言った。 「もっともらしい言い訳はいくらでも出てくるだろうが、だが、俺様は、夕食抜きでいるつもりはないんでね……」 ネコはそう言うと、夕食に取りかかった。 Perry16 Chambry12 Caxton6.4 Charles20 TMI.U31.1 U33 K561.1.1 (Aesop) ・何だかんだと言って結局食べてしまう話。 L'Estrange 459 オオカミとブタ 長年略奪の日々に明け暮れていたオオカミは、数多くの血を流したことに対して、良心の呵責に苛まれるようになった。そこで、長期に渡って肉断ちを行い、キ リスト教徒になる決意を固めた。そして、12ヶ月もの間、肉を一片たりとも口にしなかった。しかし、肉断ちは、オオカミの本性には合わなかった。オオカミ はブタがどろんこの水たまりで転げ回っているのを見ると、すぐさま走って行って、お前は何者か? と尋ねた。 「なぜそんなことを聞くのです?」ブタはそう言って、「私は近くの村に住む者ですが、古代のローマ人は、私のことを"ポルクス"と呼びました」 「素晴らしき時代の呼び名だな」オオカミはそう言うと、「俺は、法律学者のトーマス卿が編纂した辞典を読んだことがあるのだが、それによると、ポルクスと は、魚であり、ブタのようにブウブウ鳴くと書かれていたぞ」 オオカミは、苦行の誓を破ることなく、ブタで夕食をこしらえた。こうして、肉断ちの誓いは堅持されたのだった。 (Perry655) Ernest Griset p321 ネコとコウモリ 主人のお気に入りのウソという小鳥を食ってしまったネコは、主人がかんかんに怒って、彼女を見つけ次第殺してやると言っているのを耳にした。彼女は思い 悩んで、ジュピター神に祈りを捧げて、もしこの危機から救って下さるならば、命ある限り決して鳥を口にしません。と誓った。それから間もなく、彼女が窓辺 でゴロゴロ鳴いていると、一匹のコウモリが、人目をはばからずに飛び込んで来た。彼女はこの誘惑に対してどのように行動すべきか思い悩んだ。彼女は激しい 食欲に突き動かされた。しかし一方で、神様との誓いは自制を促した。ついに、彼女は全ての困難を取り除く、至極当然な相違に思い至った。鳥を獲物にするの は不正なことであるのは間違いない。しかし、ネズミとしてならば、大手を振って食うことができる。そこで、それ以上は考えるのはやめ、獲物にありついた。 えてして人間は、良心と原則に利益と興味とが反する時、空虚で根拠のない違いを見つけて、自分自身を欺こうとするものだ。 Ernest Griset p196 自分の耳に怯える兎 ある日のこと、ライオンは山羊の角でひどい傷を負わされ、激しく憤り、角を持つ動物は全て王国から追放すると宣言した。山羊や雄牛や羊や鹿など、角のあ る動物は皆、死を恐れてすぐさま逃げ出した。 自分の影を見た兎は、自分の耳がとても長いことに気付いた。 「さようなら、我が友よ」兎は夏の夕暮れ時に、いつもコロコロと子守歌を歌ってくれるコオロギに言った。「私はここを去らねばならないのです。私には角が ありますからね」 「角だって!」コオロギが声高に言った。「君は、僕を馬鹿にしているのか? 君の何処に角があると言うのだ!」 「そうはいいますがね」兎が答えた。「たとえこの耳が今の半分の長さだとしても、言いがかりをつけようとする連中にかかると、立派な角となるのです」 La Fontaine5.04 (Faerne) 無罪の証明(出典:口語六法全書刑事訴訟法「はしがき」より) かつて、アメリカの赤狩りに因んで、新イソップ物語なるものが朝日新聞にのっていたことがある。こういうものであった。 一匹のウサギが森の中を全速力で走っていた。 リスが呼びとめて、「ウサギさん、何だってそんなに走っているんですか」と聞いた。 ウサギは答えた。「マッカーシーから逃げているんだよ。彼はカンガルーを追っかけているんだよ」 リスは首をかしげて聞いた。「だってあなたはカンガルーじゃないでしょう?」 ウサギはなおも走りながらさけんだ。「それはそうなんだ。だけど、おれはカンガルーじゃないということを証明できないんだよ」 |
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