ESOPONO FABVLAS.464. エソポのハブラス1.22 (464.06--465.10)パストルと、オウカメのこと。 ある人オウカメを殺そうとて、追いかけて行くに、なんとしたか、オウカメはある茂りに入った、したをそのほとりに居合(や)うたパストル このオウカメの隠れた所をよう見たによって、オウカメその人の前に来て言うは、「いかにパストル聞こし召せ、我ほど不運な者は又もござるまい、ただいま隠れた所を人々問うとも顕わいて下されな」と慇懃に頼うだ。パストル「おう、何より易いことぢゃ」とさも頼もし気に約束した。オウカメこれをまことと心得、その言葉に安堵して隠れ伏いたところに、狩人来て、そのほとりを尋ぬるに、パストルもこれを究竟(くきょう)のみぎりぢゃと思い、言葉ではそでもない所を教え、眼(まなこ)をもって伏しどころを教えた。されども狩人
パストルの目使いを見知らいであらぬ所へ過ぎ行(ゆ)いたれば、オオカメ得たり賢しとそこを逃げ去った。その後(のち)かのオウカメにパストル行き逢(や)うて、「さても先度(せんど)は危うい命を/我が調略をもって助けたれば、定めてその恩をばよも思い忘れられじ」と言えば、オウカメ答えて言うは、「仰せの如く御身の舌の先はかたじけなけれども、眼は抜いて取りたいぞ」と。 注: ・類話などについて Caxton 4.3 狼と羊飼と猟師 伊藤正義訳 岩波ブックセンター虚偽に満ちた言葉を使って親切そうなふりをする人間が多い、作者が私たちに語る次の寓話のように。狼が猟師に追われて逃げだした。そして逃げる途中、羊飼に出合った。そこで狼は彼に言った。 「友よ、頼みがある。私を追いかけてくる者に、私がどっちへ行ったかをどうか教えないでくれ」 羊飼は答えた。「何も心配するな、おまえのことはばらしはしないから。猟師には別の道を教えよう」猟師がやってきて、羊飼に、「狼が通ったのを見掛けなかったか」と尋ねた。すると羊飼は頭と目で狼のいる場所を示し、手と口で正反対の方向を示した。猟師にはその意味がすぐに分かった。だが羊飼のいかさまなやり口のすべてを見ていた狼は、いた場所から逃げ去った。しばらくして、羊飼は狼に出合った。そこで彼は言った。「わしはおまえの秘密を守ってやった。その礼をしろ」 すると狼は彼にこう答えた。「あんたの手と口には礼を言う。あんたの頭と目にはではないぞ。私がもし逃げ出さなかったら、彼らに裏切られただろうからな」 ゆえに、二つの顔や二つの舌を持つ者を信用してはならない。かかる手合は、舌でなめながら尾でぐさりと刺すサソリに似るのだ。 Phaedrus6.28「ウサギと百姓」 伊曽保2.38 (Ph) タウンゼント 135.キツネと樵キツネが猟犬に追われて、樵のところへやってきた。キツネは樵に、身を隠す場所を乞うた。樵は、自分の小屋に隠れるようにと勧めた。そこでキツネは、小屋の隅に身を潜めた。 すぐに、猟師が猟犬と共にやって来た。そして樵に、キツネを見かけなかったかと尋ねた。樵は、見なかったと答えたが、応えている間ずうっと、キツネの隠れている小屋を指さしていた。 しかし、猟師は、その合図に気付かずに、樵の言葉だけを信じて、先を急いだ。 猟師たちが遠くへ行ってしまうと、すぐにキツネは出てきた。そして、樵に一瞥もくれずにそこから去って行こうとした。樵は、キツネを呼び止めると咎め立ててこう言った。 「まったく、命を救ってもらったくせに、お礼の一つも言わずに出て行くとは、なんて恩知らずな奴なんだ!」 するとキツネがこう応えた。 「あなたの振る舞いが、あなたの言葉と同じだったら、いくらでもお礼を言うのですがね・・・・」 Perry22 Chambry34 Babrius50 TMI.K2315 Type161 (Aesop) 註: パエドルス系統の話は目で合図するが、原典・バブリオス系統の話では、指でさししめす。 クルイロフ 8.19 内海周平訳 岩波文庫一匹の狼が森から村に駆け込んで来た。お客に来たのではなく、命乞いをするためである。狼は自分の身の上を案じていた。猟師たちと猟犬の群れがあとを追っていたのである。狼は手近な門に駆け込みたいのはやまやまだったが、あいにくどの門にも閂がかかっていた。そこで、狼は塀の上に一匹の雄猫を見つけて頼み込む。「ねえ、ヴァーセンカ、獰猛な敵どもから救ってもらうには、この村の百姓の誰がいちばん親切なのか、早く教えてくれないか? 聞こえるだろう、犬どもの吠え声と恐ろしい角笛の音が! あれはみんなおれを狙ってるんだ。」 「ステパンに頼んでごらん。とても親切な百姓だよ」と猫のヴァーシカが言う。 「そうかも知れんが、おれは奴(やっこ)さんのところで羊の生皮を剥いじまったんだ。」 ・・・・・・・・ 「これはあきれた! おまえさん、村じゃみんなにいやな思いをさせているんだね。ここでどんな助けが得られると思ったのかね? それにしても、ここのお百姓さんは、自分を犠牲にしてまであんたを救うほどばかじゃないよ。まったくの話、自分で自分を責めるがいい。播いた種は刈り取らなけりゃならないよ。」 |
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