ESOPONO FABVLAS.

0.05 (エソポがシャントに買われること) 413.09--414.22

 それより後 かのエソポにいま二人(ににん)を 買い添えてサモという所へ()い た。その所にシャントという学匠があったが、かの商人(あきゅうど)に 行き向こうて、まづ二人の能芸を尋ねらるるに、両人ともに、何でもあれ存ぜぬことは無いと答えた。その時エソポ かの二人の言いようを大きに嘲ったところで、シャント エソポに問わるるは、「そちは何とした者ぞ?」 エソポが言うは、「我は人間でござる。」 シャント怪しゅうで言わるるは、「我にそれをば問わぬ、何たる所に生まれた者ぞ?」 エソポ答えて言うは、「(は わ)の胎内から」と、シャントまた言わるるは、「身はその所をも問わぬそちは何処で生まれたぞ?」 エソポ答えて申すは、「上に生んだか下に生んだか存ぜぬ」と言うて投げ退()け たれば、その時シャント「そちと問答をするならば、終わり果てがあるまい。まづその方は何事を知ったぞ」と言えば、「何事をも存ぜぬ」と 言うところで、シャントまた「何故にお主は何をも知らぬと言うぞ」と言わるれば、エソポ「くだんの両人が悉く存じ尽くいたによって、わたくしが存ずる為に 何も残りまらせぬ」と答えたところで、シャント「これは興がった者ぢゃ」と心得て、また言わるるは、「そちを買わうと思うが、何とあろうぞ」と、エソポが 答えて言うは、「(たれ)かその事を強いて勧む るぞ」と、シャントの言わるるは、「買うてから後に、逃ぎょうと思うか? 何と」と、エソポが言うは、「我逃ぎょうと思わうずる時は、御辺へその御意をば 得まじい、」所詮答話に興がるものぢゃによって、少しの値に買い取って、その辺りの関屋の前を通らるるに、異形不思議な姿を恥て、関守がこれを怪しむれ ば、商人も、シャントも二人ともに「我が従人ではない」と言われたれば、その時エソポ「我には主人が無い、自由の身ぢゃ」と言うて喜べば、恥をも顧みい で、シャントも、商人も「これは我が所従ぢゃ」と言われた。とこうしてシャント我が(たち)に エソポを連れて帰られてあった。


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