古活字版 伊曽保物語 変体仮名

01 せ遣流一石乃こめをたゝい満可へ世し可ら須八汝
02 をうし奈八んといふ羊大き尓をと路き御辺乃こ免
03 を八可利奉る事奈しと云犬こゝ尓楚人あ利とて
04 狼そ烏そとひそ登いふものをあひ可多らひ奉行
05 の毛とへゆきてこ能む年を申あらそふ狼すゝ見
06 いてゝ申遣る八此羊よ祢を加利流事誠尓て
07 侍る登いふとひ又いてゝ申介累八我も其楚人尓て
08 候と申可ら春も又同前な利古連耳与つていぬ尓
09 そ能理を津遣ら連た利羊世ん加多なさ乃阿ま利に
10 王可気をけ徒ゝて古連尓あ多婦そ能古とく善人と
11 悪人とは悪人の可多へは於本具世ん人の見可多八

【イソホ 中 十五】

12 すく奈しそれ尓与徒て世ん人とい遍ともそ能理を
13 満介て古と者ら須といふ事あ利遣利
14    十三  いぬと志ゝむらの事
15 あ流いぬ志ゝむらを具八へて河をわ多流まんな可
16 本と尓て楚の可け水丹うつ里て大き尓みえけ連八
17 わ可く八ゆ流所乃志ゝむらよ利大起なると心えて
18 古連を春てゝ可連を登らんと須可流可ゆへ尓ふ多
19 徒な可ら是をうしなふ楚の古とくちうよく志ん乃
20 とも可ら八他のた可らをうら屋三古と尓ふ連てむ
21 さふ流程尓たちまち天罰を加う無るわ可も川所乃
22 た可らをもうしなう事あ利介利
古活字版 伊曽保物語 現字体仮名

01 せける一石のこめをたゝいまかへせしからすは汝
02 をうしなはんといふ羊大きにをとろき御辺のこめ
03 をはかり奉る事なしと云犬こゝにそ人ありとて
04 狼そ烏そとひそといふものをあひかたらひ奉行
05 のもとへゆきてこのむねを申あらそふ狼すゝみ
06 いてゝ申けるは此羊よねをかりる事誠にて
07 侍るといふとひ又いてゝ申けるは我も其そ人にて
08 候と申からすも又同前なりこれによつていぬに
09 その理をつけられたり羊せんかたなさのあまりに
10 わかけをけつゝてこれにあたふそのことく善人と
11 悪人とは悪人のかたへはおほくせん人のみかたは

【イソホ 中 十五】

12 すくなしそれによつてせん人といへともその理を
13 まけてことはらすといふ事ありけり
14    十三  いぬとしゝむらの事
15 あるいぬしゝむらをくはへて河をわたるまんなか
16 ほとにてそのかけ水にうつりて大きにみえけれは
17 わかくはゆる所のしゝむらより大きなると心えて
18 これをすてゝかれをとらんとすかるかゆへにふた
19 つなから是をうしなふそのことくちうよくしんの
20 ともからは他のたからをうらやみことにふれてむ
21 さふる程にたちまち天罰をかうむるわかもつ所の
22 たからをもうしなう事ありけり
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