古活字版 伊曽保物語 変体仮名
01 い可ゝし奉らんと申そ能古とく盗人一人あ流
02 た尓物さは可し具加まひすしき尓津まをあ多へて
03 志そん八ん志やう世ん事い可んとの給へは介尓
04 もとそ人々申介流そ能古とく悪人尓は力を楚ゆる
05 事雪丹霜を楚ゆ流可ことしあたを八恩尓て保う
06 須る奈れ八悪人尓はそ能ち可らを於とさする事可連
07 可ため尓盤よきた春遣たる遍し
08 十六 徒ると狼乃事
09 あ流時狼のと耳大き奈る本ねを多て々須て尓難
10 儀尓於よひ遣流折節鶴此由を三て御辺はな尓事
11 を加奈しみ給ふそ登いふ狼なく/\申介流八我
【イソホ 中 十七】
12 乃と尓大きなる本ねを多て侍利古連を八御辺なら
13 ては春くひ給ふへ幾ひと奈しひ多すらに頼奉ると
14 云介れ八徒る件乃くち八しをのへ狼乃口をあけ佐世
15 保祢を具八へてゑいやと飛幾い多須そ能とき徒る
16 狼尓申介流八今よ利乃ち此本うをん尓よ徒て志多
17 しく申語へし登云介れ八狼い可川ていふやう八なん
18 てふ汝可な尓本と能をんを見世遣流そや汝可くひ
19 しや婦徒と具いきらぬも今それ可し可心にあ里し
20 をた春けをくこそ汝可多め尓は報恩な利といひけ
21 連八徒るち可ら耳於与八須たちさ利ぬそ能古と
22 く悪人尓多いして能事を教とい遍とも可へつて
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古活字版 伊曽保物語 現字体仮名
01 いかゝし奉らんと申そのことく盗人一人ある
02 たに物さはかしくかまひすしきにつまをあたへて
03 しそんはんしやうせん事いかんとの給へはけに
04 もとそ人々申けるそのことく悪人には力を楚ゆる
05 事雪に霜をそゆるかことしあたをは恩にてほう
06 するなれは悪人にはそのちからをおとさする事かれ
07 かためにはよきたすけたるへし
08 十六 つると狼の事
09 ある時狼のとに大きなるほねをたてゝすてに難
10 儀におよひける折節鶴此由をみて御辺はなに事
11 をかなしみ給ふそといふ狼なく/\申けるは我
【イソホ 中 十七】
12 のとに大きなるほねをたて侍りこれをは御辺なら
13 てはすくひ給ふへきひとなしひたすらに頼奉ると
14 云けれはつる件のくちはしをのへ狼の口をあけさせ
15 ほねをくはへてゑいやとひきいたすそのときつる
16 狼に申けるは今よりのち此ほうをんによつてした
17 しく申語へしと云けれは狼いかつていふやうはなん
18 てふ汝かなにほとのをんをみせけるそや汝かくひ
19 しやふつとくいきらぬも今それかしか心にありし
20 をたすけをくこそ汝かためには報恩なりといひけ
21 れはつるちからにおよはすたちさりぬそのこと
22 く悪人にたいして能事を教といへともかへつて
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