古活字版 伊曽保物語 変体仮名

01 とら須さう屋くを於しへけ連八はけま津申介流八
02 阿なう連し古連こそとて狼乃志たることくくひ尓
03 とひ可ゝ里介れ八け徒く馬尓くらゐこ路さる母可奈
04 志む事加支利奈しそ能古と具い佐ゝ可能事を師
05 匠に満奈ひていま多師志やうもゆるさぬ尓達し
06 たると思ふへ可ら須こ能狐も年月をへて狼の志
07 わさを習者ゝ加ゝ流連うしなるわさ八世しとそ
08    十一  野牛と狼乃事
09 あ流人阿ま多の羊を可いと利其後羊乃けいこ耳
10 多けき犬をそ可ひそへ介流古連尓よて狼すこしも
11 此ひ徒しを於可さ春志可流尓可能いぬ俄に死尓

【イソホ 下 十四】

12 介利八須と累うれへて云この犬志ゝて後八ひ津志
13 さ多めて狼耳とら連なん春い可ゝ八世んと奈け支
14 け連八野牛すゝみ出て申遣る八この事阿なかち丹
15 可奈志み給ふへから春其ゆへ八我角越於とし可能
16 いぬ乃可はをき世てひ津しをけいこさせたまへ
17 佐多めて於ほ可め於それなんやと申け連者八須
18 と流遣尓毛とてそ能古とくし介利古連尓よて於本
19 可めいぬかと心えてひ津し乃そは尓ち可徒く事
20 なし然所耳於本加め毛つての外うゑ尓徒可連て
21 そ能志世ん事をも可へ利見す徒とよ徒てひ津し
22 をく王へて尓く流所を可能野牛於つ可け多利於本
古活字版 伊曽保物語 現字体仮名

01 とらすさうやくをおしへけれははけまつ申けるは
02 あなうれしこれこそとて狼のしたることくくひに
03 とひかゝりけれはけつく馬にくらゐころさる母かな
04 しむ事かきりなしそのことくいさゝかの事を師
05 匠にまなひていまた師しやうもゆるさぬに達し
06 たると思ふへからすこの狐も年月をへて狼のし
07    わさを習はゝかゝるれうしなるわさはせしとそ
08    十一  野牛と狼の事
09 ある人あまたの羊をかいとり其後羊のけいこに
10 たけき犬をそかひそへけるこれによて狼すこしも
11 此ひつしをおかさすしかるにかのいぬ俄に死に

【イソホ 下 十四】

12 けりはすとるうれへて云この犬しゝて後はひつし
13 さためて狼にとられなんすいかゝはせんとなけき
14 けれは野牛すゝみ出て申けるはこの事あなかちに
15 かなしみ給ふへからす其ゆへは我角をおとしかの
16 いぬのかはをきせてひつしをけいこさせたまへ
17 さためておほかめおそれなんやと申けれははす
18 とるけにもとてそのことくしけりこれによておほ
19 かめいぬかと心えてひつしのそはにちかつく事
20 なし然所におほかめもつての外うゑにつかれて
21 そのしせん事をもかへりみすつとよつてひつし
22 をくわへてにくる所をかの野牛おつかけたりおほ
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