古活字版 伊曽保物語 変体仮名

01    廿六  さると犬との事
02 あ流女さる一と尓二つ子をう三介利され八我多い
03 ないよ利同子をうみな可ら一津をはふ可くあひ志
04 一つを八を路楚可尓須可能尓くまれ子い可んとも
05 世ん可多なふて月日を於く連利わ可阿ひする子を
06 者まへにい多き尓くむ子をせな可に於介利あ流時
07 うし路よ利多けき犬来る事あ利此さるあ者てさ
08 八ひてに具る本と耳い多具こを可多わ起に者さ
09 三て八し累本と尓須三屋可にゆく事奈し志き利
10 尓可能いぬ近付介れ八ま津命をた春可らんとか多手
11 尓てわき者さみたるこを春てゝ尓け乃ひ介利可流

【イソホ 下 廿八】

12 可ゆへ尓つ年耳尓く三てせな可耳於介流尓く
13 満連こ八徒ゝ可毛なくと利徒支き多連里可能てう
14 あひ世しこ八いぬ耳くひこ路されぬいく多ひく
15 やめ登も可ひ奈支耳よ徒てつ井耳可能にくみ
16 徒るこをお本世たてゝまへ乃こ能古とく耳てう
17 あひ世利そ能古とく人としても今まて志多敷思ふ
18 も能尓うとんしを路楚可なる者尓むつ婦もたゝ
19 此さる能たとへ尓古と奈ら須是尓よて是を思へ者
20 可連八よし古連八悪しと志奈越ゑらふへ可ら春
21 た連もひとし具思ふならは人又わ連を於もふへ幾
22 事う多可ひ奈し
古活字版 伊曽保物語 現字体仮名

01    廿六  さると犬との事
02 ある女さる一とに二つ子をうみけりされは我たい
03 ないより同子をうみなから一つをはふかくあひし
04 一つをはをろそかにすかのにくまれ子いかんとも
05 せんかたなふて月日をおくれりわかあひする子を
06 はまへにいたきにくむ子をせなかにおけりある時
07 うしろよりたけき犬来る事あり此さるあはてさ
08 はひてにくるほとにいたくこをかたわきにはさ
09 みてはしるほとにすみやかにゆく事なししきり
10 にかのいぬ近付けれはまつ命をたすからんとかた手
11 にてわきはさみたるこをすてゝにけのひけりかる

【イソホ 下 廿八】

12 かゆへにつねににくみてせなかにおけるにく
13 まれこはつゝかもなくとりつききたれりかのてう
14 あひせしこはいぬにくひころされぬいくたひく
15 やめともかひなきによつてつゐにかのにくみ
16 つるこをおほせたてゝまへのこのことくにてう
17 あひせりそのことく人としても今まてした敷思ふ
18 ものにうとんしをろそかなる者にむつふもたゝ
19 此さるのたとへにことならす是によて是を思へは
20 かれはよしこれは悪しとしなをゑらふへからす
21 たれもひとしく思ふならは人又われをおもふへき
22 事うたかひなし
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