古活字版 伊曽保物語 変体仮名

01 たゝしての御まへ尓て可たふ登ゝならんことあき
02 ら可な利そ能時丹乃そんてはわ連存生にあ利し
03 ときひと利乃可多ふとを若於可まし物をとく屋む
04 へ幾事う多可ひ奈し
05    丗四  出家と盗人の事
06 あ流法師道を行遣る所耳盗人一人ゆきむ可川
07 て可能僧をた乃三介流八見多てまつ連八屋ん古と
08 奈支御出家也わ連奈らひなき悪人なれ八祢可八く
09 八御いの利をも川てわ可悪心をひる可へし善人
10 登な利候やうに幾世いしたまへ可しと申介れ八
11 それ古そ我身尓いとやすき事奈れと里やう志やう

【イソホ 下 丗九】

12 せられぬ可能ぬ春人も返/\た乃三てそこをさ利
13 ぬ其後八流可尓程経て可能僧とぬ春人とゆき阿ひ
14 遣利ぬ須人楚う乃袖をひ可へてい可川て申介流八
15 わ連御辺をたのむとい遍ともそ能可ひ奈しきせい
16 志給八須やと申け連八楚う答云我其日よ利へん
17 志乃いと満毛なく御辺の事をこそい乃利候へと
18 のたまへはぬ須人申介流八於古と八出家乃身登し
19 てそら古とを乃たまふ物可奈そ能日よ利悪念乃三
20 こそ於こ利候へと申け連者楚う乃者可利古と尓
21 俄耳乃と可はきて世んか多なし登乃たまへは
22 ぬ春人申介累八古連に井との侍るそや我うへ
古活字版 伊曽保物語 現字体仮名

01 たゝしての御まへにてかたふとゝならんことあき
02 らかなりその時にのそんてはわれ存生にありし
03 ときひとりのかたふとを若おかまし物をとくやむ
04 へき事うたかひなし
05    丗四  出家と盗人の事
06 ある法師道を行ける所に盗人一人ゆきむかつ
07 てかの僧をたのみけるは見たてまつれはやんこと
08 なき御出家也われならひなき悪人なれはねかはく
09 は御いのりをもつてわか悪心をひるかへし善人
10 となり候やうにきせいしたまへかしと申けれは
11 それこそ我身にいとやすき事なれとりやうしやう

【イソホ 下 丗九】

12 せられぬかのぬす人も返/\たのみてそこをさり
13 ぬ其後はるかに程経てかの僧とぬす人とゆきあひ
14 けりぬす人そうの袖をひかへていかつて申けるは
15 われ御辺をたのむといへともそのかひなしきせい
16 し給はすやと申けれはそう答云我其日よりへん
17 しのいとまもなく御辺の事をこそいのり候へと
18 のたまへはぬす人申けるはおことは出家の身とし
19 てそらことをのたまふ物かなその日より悪念のみ
20 こそおこり候へと申けれはそうのはかりことに
21 俄にのとかはきてせんかたなしとのたまへは
22 ぬす人申けるはこれに井との侍るそや我うへ
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