万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 伊曽保物語中
02 第一 いそ本子息尓い遣ん能條々
03 一 汝此事よく聞べし。他人尓能道を教といへ共。我身耳
04 多も多ざること有。それ人間能有様八夢幻能ごとし。志可乃三
05 奈ら須゛。王川゛可奈る此身を扶可゛多め尓。屋ゝも須連八゛悪道尓八いり
06 安善人尓八入可゛多し。ことにふれ天。我三の者可奈きことを可^顧。
07 二 徒年尓。天道越うやまひ。事毎尓。天命を恐奉べし。君尓二
08 心奈く。忠節を尽儘尓。命をふ^惜。真心に徒可へ奉るべし。
09 三 夫人として。法度を守らざれ八゛。畜類尓不^異本しひまゝ
10 尓悪道を守護せ八゛。即天罰をう遣ん事。くび春をふ^可廻
11 四 難義出こん時。ひろき心を以天。其難越忍べし。志可ら者゛
12 多ちまち。自在能くどくと奈川天。せん志゛ん尓い多るへし
【伊曽保中 〇三】
13 五 人として。重可らざる時八。威勢奈し。敵可奈ら春゛これを
14 あ奈どる。然といへ共。親しき人尓八可ろく。や八ら可にむ可ふべし
15 六 妻女尓常尓勇を可^作。都て女八邪路尓。入安。能道入難
16 七 遣んどん者うい川のもの尓。とも奈ふ事奈可れ
17 八 悪人能威勢莫羨。故如何。の本゛るもの八終尓八く多゛る物也
18 九 我言葉を春く奈くして。他人能語越きく遍゛し
19 十 徒年尓我口尓。能道能く川王越ふくむべし。ことに酒宴
20 能座尓徒ら奈る時八。物いふこと越徒ゝ志むべし。故[如]何と奈れ
21 者゛。酒宴能習。能詞を退け天。狂言綺語をもちゆる物也
22 十一 能道を学春る時其憚を顧ざれ。習を八れ八゛君子と成物也
23 十二 権威を以天。人を従んより八。志可し。柔尓して。人耳奈川可
24 志んせられよ
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 伊曽保物語中
02 第一 いそほ子息にいけんの條々
03 一 汝此事よく聞べし。他人に能道を教といへ共。我身に
04 たもたざること有。それ人間の有様は夢幻のごとし。しかのみ
05 ならず。わづかなる此身を扶がために。やゝもすれば悪道にはいり
06 安善人には入がたし。ことにふれて。我みのはかなきことを可^顧。
07 二 つねに。天道をうやまひ。事毎に。天命を恐奉べし。君に二
08 心なく。忠節を尽儘に。命をふ^惜。真心につかへ奉るべし。
09 三 夫人として。法度を守らざれば。畜類に不^異ほしひまゝ
10 に悪道を守護せば。即天罰をうけん事。くびすをふ^可廻
11 四 難義出こん時。ひろき心を以て。其難を忍べし。しからば
12 たちまち。自在のくどくとなつて。せんじんにいたるへし
【伊曽保中 〇三】
13 五 人として。重からざる時は。威勢なし。敵かならずこれを
14 あなどる。然といへ共。親しき人にはかろく。やはらかにむかふべし
15 六 妻女に常に[勇]を可^作。都て女は邪路に。入安。能道入難
16 七 けんどんはういつのものに。ともなふ事なかれ
17 八 悪人の威勢莫羨。故如何。のぼるものは終にはくだる物也
18 九 我言葉をすくなくして。他人の語をきくべし
19 十 つねに我口に。能道のくつわをふくむべし。ことに酒宴
20 の座につらなる時は。物いふことをつゝしむべし。故[如]何となれ
21 ば。酒宴の習。能詞を退けて。狂言綺語をもちゆる物也
22 十一 能道を学する時其憚を顧ざれ。習をはれば君子と成物也
23 十二 権威を以て。人を従んよりは。しかし。柔にして。人になつか
24 しんせられよ
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