万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 十三 可く春事を女尓。志ら春べ可ら春゛。女八心者可奈ふして。外
02 尓漏しや春き物也。それ尓依天。多ちまち大事出来れる
03 十四 奈んぢ。乞食非人を。いやしむる事奈可れ。還而慈悲
04 をおこさば。可奈ら春天帝能多春け尓。あ川[゜]可るべし
05 十五 事能後尓。千万悔より八。志可し[゜]ことの先尓千度案ぜよ
06 十六 [天ぐ]能人尓。けう遣越奈須こと奈可れ。ま奈こを愁流。
07 ものゝ多め耳八。ひ[と]利可へ里天。さ八里登奈る可゛ことし
08 十七 やまひを治春るに八。薬を以天春。人能こゝ路ま可゛れ累
09 を。奈を春耳盤。よきをしへをも川天春る奈里
10 十八 老者能異見越。可路しむる事奈可れ。老多る者八。
11 そ能事王可゛身尓保多゛され天奈利。奈んぢ毛年老。齢
12 加さ奈るに志多可゛ひ天。そ能事多ちまち出来春べし
【伊曽保中 〇四五】
13 第ニ え志川との帝王より不審返答能事
14 さる程尓いそ本。彼者可りことに多く三ける八。きり本と云大
15 成鳥越。四川生奈可゛ら取天。其足尓籠をゆい付天。其中尓
16 童子一人徒゛ゝ入おき。其鳥能餌食をも多せ。ゑじきをあぐ
17 類時八とびあ可゛り。さぐ類時八とびさ可゛るやう丹して。此由を
18 奏聞春れ八゛。御門大きに御感有。さら八゛とて。えし徒と尓
19 い多りぬ。えし徒との人々いそ本可゛姿能於可しげ奈るを三て。笑
20 あざ遣ること限奈し。され共いそ本少も者ゞ可る遣しき
22 も奈く。庭上尓可しこまる。国王此由叡覧有天。者ひろう
21 丹や能御使八御辺丹天侍る可。こくう尓てん可くを。立べきとの
23 不審八い可に登の多まへ八゛。承り候とて我屋尓帰りぬ。され八゛此事
24 風聞して。都鄙。[奈]んきやう能者共。是を三んとて都尓上ぬ。
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 十三 かくす事を女に。しらすべからず。女は心はかなふして。外
02 に漏しやすき物也。それに依て。たちまち大事出来れる
03 十四 なんぢ。乞食非人を。いやしむる事なかれ。還而慈悲
04 をおこさば。かならす天帝のたすけに。あつ[゜]かるべし
05 十五 事の後に。千万悔よりは。しかし[゜]ことの先に千度案ぜよ
06 十六 [天ぐ]の人に。けうけをなすことなかれ。まなこを愁る。
07 ものゝためには。ひ[と]りかへりて。さはりとなるがことし
08 十七 やまひを治するには。薬を以てす。人のこゝろまがれる
09 を。なをすには。よきをしへをもつてするなり
10 十八 老者の異見を。かろしむる事なかれ。老たる者は。
11 その事わが身にほだされてなり。なんぢも年老。齢
12 かさなるにしたがひて。その事たちまち出来すべし
【伊曽保中 〇四五】
13 第ニ えしつとの帝王より不審返答の事
14 さる程にいそほ。彼はかりことにたくみけるは。きりほと云大
15 成鳥を。四つ生ながら取て。其足に籠をゆい付て。其中に
16 童子一人づゝ入おき。其鳥の餌食をもたせ。ゑじきをあぐ
17 る時はとびあがり。さぐる時はとびさがるやうにして。此由を
18 奏聞すれば。御門大きに御感有。さらばとて。えしつとに
19 いたりぬ。えしつとの人々いそほが姿のおかしげなるをみて。笑
20 あざけること限なし。され共いそほ少もはゞかるけしき
21 もなく。庭上にかしこまる。国王此由叡覧有て。はひろう
22 にやの御使は御辺にて侍るか。こくうにてんかくを。立べきとの
23 不審はいかにとのたまへば。承り候とて我屋に帰りぬ。されば此事
24 風聞して。都鄙。[な]んきやうの者共。是をみんとて都に上
ぬ。
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