万治版 伊曽保物語 変体仮名
図6
【伊曽保中 〇六七】
01 其日尓のぞんで。彼きり本を。こしらへ。庭上尓春へ。所八い川゛く
02 と申遣れ八゛。あ能辺こそよ可んめれと仰遣れ八゛。其辺尓さし
03 者奈春。四川能鳥。四所尓立天ひらめき遣るゝ処尓。籠の内
04 より童部能声としてよ者゛八り遣る八。此所尓てん可゛くを立ん
05 事や春し早。土と石越。者こびあ可゛り給へとのゝ志り遣れ八゛。御
06 門を初奉。月卿雲客女房達尓至迄。実理成返答哉と。あ
07 きれ者てゝぞおはし遣る。帝此由叡覧有天。いと賢謀可奈
08 とて。いそ本を貴給ふ。今日よりして我師多るへしと定給ふ
09 第三 祢多奈越。いそ本尓尋給ふ不審能事
10 祢多奈越帝王。いそ本に問給八く。け連しやの国能駒い奈ゝく
11 時。当国能ぞうやく者らむ事有い可んと宣へ八゛。いそ本申
12 遣る八。輙答可゛多ふ候。い可様丹毛明日こそ奏春べ遣れとて。御
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
図6
【伊曽保中 〇六七】
01 其日にのぞんで。彼きりほを。こしらへ。庭上にすへ。所はいづく
02 と申ければ。あの辺こそよかんめれと仰ければ。其辺にさし
03 はなす。四つの鳥。四所に立てひらめきけるゝ処に。籠の内
04 より童部の声としてよばはりけるは。此所にてんがくを立ん
05 事やすし早。土と石を。はこびあがり給へとのゝしりければ。御
06 門を初奉。月卿雲客女房達に至迄。実理成返答哉と。あ
07 きれはてゝぞおはしける。帝此由叡覧有て。いと賢謀かな
08 とて。いそほを貴給ふ。今日よりして我師たるへしと定給ふ
09 第三 ねたなを。いそほに尋給ふ不審の事
10 ねたなを帝王。いそほに問給はく。けれしやの国の駒いなゝく
11 時。当国のぞうやくはらむ事有いかんと宣へば。いそほ申
12 けるは。輙答がたふ候。いか様にも明日こそ奏すべけれとて。御
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