万治版 伊曽保物語 変体仮名

01 ()(ろん)して(せん)奈し。(多ゞ)権威(けんゐ)堪忍(可ん尓ん)とをも川天む可ふべし

02     第十二 (いぬ)とひ徒じとの事

03 或時犬(あるときいぬ)(ひつじ)(ゆき)あひ天(いふ)やう。(奈んぢ)尓お保せ介る。一(こく)(こめ)
04 只今(多ゝい万)可へせ(し可ら)春゛八。(奈んち)をうし奈八んと(いふ)(ひつじ)(於本)きに驚御辺(をどろきごへん)
05 (こめ)を八可り奉ること奈しと(いふ)(いぬ)(こゝ)丹[天]人(あり)とて。(於本可三)ぞ。(可らす)
06 そ。とびぞ。登(いふ)物を可多らひ。奉行(ぶぎやう)能もとへ(ゆき)天。此(む年)
07 申(あらそふ)狼出(お本可三いで)天申遣る八。此(ひつじ)よ年を可里遣ること(まこと)尓て
08 侍ると(いふ)。とび又出天申遣る八。(王れ)訴人(そ尓ん)尓て候と申。(可らす)
09 又同前(どうぜん)也。(これ)(よ川)(いぬ)其理(そのり)(つけ)られ多利。(ひつじ)せん可多奈
10 さ能(あまり)尓。我毛(王可゛け)を介づ利(これ)尓あ多ふ。其ごとく善人(ぜん尓ん)悪人(あく尓ん)
11 盤。悪人(あく尓ん)能可多へ八お保く善人(ぜん尓ん)能見可多八春く奈し。それ尓(よ川)
12 善人(ぜん尓ん)といへ共。其()をまげ天。こと八ら須゛と(いふ)事あり遣利

    【伊曽保中      〇十七 八】

13     第十三  (いぬ)志ゝむら能事

14 或犬(あるいぬ)志ゝむらをく八へ天。川を(王多る)真中(まん奈可)尓て其影(その可げ)(三づ)尓う川
15 里て大きに見衣遣れ八゛。(王可゛)く八ゆる所能志ゝむらよ利大成(於本き奈る)と心
16 ()天。是を(すて)て可れをとらんと春。(可る可゛ゆへ)に二川奈可゛ら是を(うし奈ふ)。其
17 ごとく重欲心(志゛うよくしん)(とも可゛ら)八。()(多可ら)をうらや三。ことにふ連天むさ
18 ふる程に。多ちまち天罰(てん者゛つ)(可うふる)我持所(王可゛もつところ)(た可ら)を毛失事有(うし奈ふことあり)

19     第十四  師子王(志し王う)(ひつじ)(うし)野牛(のうし)能事

20 或時(あるとき)志ゝ王う。(ひつじ)。うし。野牛(うし)。四川山中(さんちう)をと毛奈ひ(ゆく)尓。(いの志ゝ)
21 (ゆき)あひ。則是(す奈八ちこれ)(ころ)春。其四川能え多゛を王け天とらんと須。志ゝ
22 (王う)さゝへ天申介る八。(王れ)遣多゛ものゝ(王う)多利。其(とく)(まづ)え多゛一川(王れ)
23 尓えさせよ。又我力(王可゛ち可ら)威勢(ゐせい)()に春ぐれ利。汝等(奈んぢら)(すぐれ)天可遣利(めぐ)
24 て是を(ころ)須。それ尓(よ川)天え多゛一川えさせよ。(い万)二川(のこ)るえ多゛を

万治版 伊曽保物語 現字体仮名

01 ()(ろん)して(せん)なし。(たゞ)権威(けんゐ)堪忍(かんにん)とをもつてむかふべし

02     第十二 (いぬ)とひつじとの事

03 或時犬(あるときいぬ)(ひつじ)(ゆき)あひて(いふ)やう。(なんぢ)におほせける。一(こく)(こめ)
04 只今(たゝいま)かへせ(しから)ずは。(なんち)をうしなはんと(いふ)(ひつじ)(おほ)きに驚御辺(をどろきごへん)
05 (こめ)をはかり奉ることなしと(いふ)(いぬ)(こゝ)に[て]人(あり)とて。(おほかみ)ぞ。(からす)
06 そ。とびぞ。と(いふ)物をかたらひ。奉行(ぶぎやう)のもとへ(ゆき)て。此(むね)
07 申(あらそふ)狼出(おほかみいで)て申けるは。此(ひつじ)よねをかりけること(まこと)にて
08 侍ると(いふ)。とび又出て申けるは。(われ)訴人(そにん)にて候と申。(からす)
09 又同前(どうぜん)也。(これ)(よつ)(いぬ)其理(そのり)(つけ)られたり。(ひつじ)せんかたな
10 さの(あまり)に。我毛(わがけ)をけづり(これ)にあたふ。其ごとく善人(ぜんにん)悪人(あくにん)
11 は。悪人(あくにん)のかたへはおほく善人(ぜんにん)のみかたはすくなし。それに(よつ)
12 善人(ぜんにん)といへ共。其()をまげて。ことはらずと(いふ)事ありけり

    【伊曽保中      〇十七 八】

13   第十三  (いぬ)しゝむらの事

14 或犬(あるいぬ)しゝむらをくはへて。川を(わたる)真中(まんなか)にて其影(そのかげ)(みづ)にうつ
15 りて大きに見えければ。(わが)くはゆる所のしゝむらより大成(おほきなる)と心
16 ()て。是を(すて)てかれをとらんとす。(かるがゆへ)に二つながら是を(うしなふ)。其
17 ごとく重欲心(じうよくしん)(ともがら)は。()(たから)をうらやみ。ことにふれてむさ
18 ふる程に。たちまち天罰(てんばつ)(かうふる)我持所(わがもつところ)(たから)をも失事有(うしなふことあり)

19     第十四  師子王(ししわう)(ひつじ)(うし)野牛(のうし)の事

20 或時(あるとき)しゝわう。(ひつじ)。うし。野(うし)。四つ山中(さんちう)をともなひ(ゆく)に。(いのしゝ)
21 (ゆき)あひ。則是(すなはちこれ)(ころ)す。其四つのえだをわけてとらんとす。しゝ
22 (わう)さゝへて申けるは。(われ)けだものゝ(わう)たり。其(とく)(まづ)えだ一つ(われ)
23 にえさせよ。又我力(わがちから)威勢(ゐせい)()にすぐれり。汝等(なんぢら)(すぐれ)てかけり(めぐ)
24 て是を(ころ)す。それに(よつ)てえだ一つえさせよ。(いま)二つ(のこ)るえだを
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