万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 八゛。誰丹天毛あ連手越可け多らん者八。我敵多るべし。是尓依天
02 各空罷帰る。其ごとく人八多ゞ我尓似多る者と友奈ふべし。
03 我よ利上成人と友奈へ八゛。い多つ可゛八しきことの三有て。其徳一も奈き物也
04 第十五 日輪と盗人能事
05 或時ぬ春人゛一人有遣利。其所能人。可れ尓妻をあ多へんと云
06 去奈可゛ら学者能本尓行天是を問尓。学者多とへを以天
07 云。され八゛人間天道にあふぎ申遣る八。日輪妻を持給八ぬ
08 様尓者可らひ給へと云。天道い可にととひ給へ八゛人間答云。日輪
09 多ゞ一ましま須さへ。えんてん能比八あつきを忍び難し。志可の
10 三奈ら春゛其時八。五古くをて利そこ奈ふ。もし妻子遣んぞく繁
11 昌せ八゛い可ゞ志奉らんと云。其ごとく盗人一人有多゛に。物さ八可゛しく
12 可満ひ春しきに。妻をあ多へ子孫繁昌せんこと。い可ゞと宣へ者゛。
【伊曽保中 〇十九】
13 実もとぞ人々申遣る。其ごとく悪人尓八力をそゆること。雪
14 尓霜をそゆる可゛ごとし。あ多を八゛恩丹天報春゛る奈れ者゛。悪
15 人尓八其力をおとさ春ること。可れ可゛多め尓八よき助多るべし
16 第十六 鶴と於本可三との事
17 或時狼。のどに大き成骨を立天。難義尓及ける折節。
18 鶴此由を三て。御辺八何を可奈し三給ふぞと云。狼鳴々申
19 遣る八。我のどに大き成骨を多て侍利。是を八゛御辺奈らで盤。
20 春くひ給ふ人奈し。ひ多春ら頼奉ると云遣れ八゛。鶴件能
21 口者゛しをのへ。狼能口をあけさせ保年を。く八へ天えいやと引出
22 春。其時鶴。狼尓申介る八。今よ利後此報恩に依天。親く
23 申語るべしと云遣れ八゛。狼い可川天云様。奈んでう汝可何程の
24 恩を見せ介るそや。汝可゛首ふ徒登喰きらんと。今某可゛心尓
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 ば。誰にてもあれ手をかけたらん者は。我敵たるべし。是に依て
02 各空罷帰る。其ごとく人はたゞ我に似たる者と友なふべし。
03 我より上成人と友なへば。いたつがはしきことのみ有て。其徳一もなき物也
04 第十五 日輪と盗人の事
05 或時ぬす人゛一人有けり。其所の人。かれに妻をあたへんと云
06 去ながら学者の本に行て是を問に。学者たとへを以て
07 云。されば人間天道にあふぎ申けるは。日輪妻を持給はぬ
08 様にはからひ給へと云。天道いかにととひ給へば人間答云。日輪
09 たゞ一ましますさへ。えんてんの比はあつきを忍び難し。しかの
10 みならず[其]時は。五こくをてりそこなふ。もし妻子けんぞく繁
11 昌せばいかゞし奉らんと云。其ごとく盗人一人有だに。物さはがしく
12 かまひすしきに。妻をあたへ子孫繁昌せんこと。いかゞと宣へば。
【伊曽保中 〇十九】
13 実もとぞ人々申ける。其ごとく悪人には力をそゆること。雪
14 に霜をそゆるがごとし。あたをば恩にて報ずるなれば。悪
15 人には其力をおとさすること。かれがためにはよき助たるべし
16 第十六 鶴とおほかみとの事
17 或時狼。のどに大き成骨を立て。難義に及ける折節。
18 鶴此由をみて。御辺は何をかなしみ給ふぞと云。狼鳴々申
19 けるは。我のどに大き成骨をたて侍り。是をば御辺ならでは。
20 すくひ給ふ人なし。ひたすら頼奉ると云ければ。鶴件の
21 口ばしをのへ。狼の口をあけさせほねを。くはへてえいやと引出
22 す。其時鶴。狼に申けるは。今より後此報恩に依て。親く
23 申語るべしと云ければ。狼いかつて云様。なんでう汝か何程の
24 恩を見せけるそや。汝が首ふつと喰きらんと。今某が心に
|