万治版 伊曽保物語 変体仮名
図8
【伊曽保中 〇廿ニ】
01 遣んもん可うけ乃人成共。我心を保しひまゝ尓せ須゛。智者能
02 教尓志多可゛ふべし。其故八王しと烏を。くらぺん尓。其徳奈ど可
03 八万さるべき奈連共。可多徒ぶ利能わざにおゐ天八。烏も川
04 と毛是をえ多る。事尓ふ連天こと/\尓人耳とふべし
05 第廿一 可ら春登きつ年能事
06 或時狐餌志゛き越もとめ可年天。古ゝ可しこさ満よふ処尓。烏
07 志ゝむらをく八へ天木能上尓居連利。狐心に於もふやう。我此志ゝ
08 むらをとら満本しく覚衣て。烏能居遣る木能本尓立よ里
09 。い可に御辺御身八。万能鳥の中尓春ぐ連天。う川くしく見衣
10 させお八しま須。然といへ共少こと多利給八ぬ事とて八。御こゑ能
11 者奈ごゑ尓こそ侍連。但此程世上尓申し八。御こゑも事能外
12 能王多らせ給ふ奈ど申てこそ候へ。哀一ふしき可万本しうこそ
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
図8
【伊曽保中 〇廿ニ】
01 けんもんかうけの人成共。我心をほしひまゝにせず。智者の
02 教にしたがふべし。其故はわしと烏を。くらぺんに。其徳などか
03 はまさるべきなれ共。かたつぶりのわざにおゐては。烏もつ
04 とも是をえたる。事にふれてこと/\に人にとふべし
05 第廿一 からすときつねの事
06 或時狐餌じきをもとめかねて。こゝかしこさまよふ処に。烏
07 しゝむらをくはへて木の上に居れり。狐心におもふやう。我此しゝ
08 むらをとらまほしく覚えて。烏の居ける木の本に立より
09 。いかに御辺御身は。万の鳥の中にすぐれて。うつくしく見え
10 させおはします。然といへ共少ことたり給はぬ事とては。御こゑの
11 はなごゑにこそ侍れ。但此程世上に申しは。御こゑも事の外
12 能わたらせ給ふなど申てこそ候へ。哀一ふしきかまほしうこそ
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