万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 侍連と申遣れ八゛。烏此義を実とや心得天。さら八こゑを
02 出さんとて口を者多け遣るひま尓。終尓志ゝむらを落しぬ。
03 狐是を取天尓げ去ぬ。其ごとく人い可に本むると云共。聊誠
04 とおもふべ可ら春゛。若此こと越少も志んぜ八゛。まんき出来せんこと
05 疑奈し。人能本めん時八徒ゝ志んで奈を遍利く多゛る遍゛し
06 第廿ニ 馬といぬとの事
07 或人。ゑのこをい登い多八利遣る尓や。其主人外よ利帰利し時。
08 彼ゑ能こ其ひざにの本゛利。む年尓手をあげ口の保と利を祢ぶり
09 万八る。是尓依天主人愛春る事いやまし也。馬保の可に此由を
10 見天羨や思ひ遣ん。天晴我も可様尓こそ志侍らめし思ひ
11 定て。有時主人外よ利帰遣る時。馬主人能む年尓飛可ゝ里。
12 顔を祢ぶ利。尾をふ利奈どし遣れ八゛。主人是を三て。甚い可りを
【伊曽保中 〇廿三】
13 奈して棒を於川取天。本能馬や尓をし入ける。其ごとく人の親
14 疎をわきまへ春゛。我方よ利馳走可゛本こそ。甚以天於可し幾
15 事奈連。我程々尓志多可゛川天。其あいさ川を奈春遍゛し
16 第廿三 志ゝ王うと祢春゛三能事
17 或時。志ゝ王前後も知春臥ま登゛ろ三遣る処尓。鼡余多指
18 つどひあそび。多八ふ連遣る程尓。ふし多る志ゝ王う能上尓。鼡一川
19 とびあ可゛里ぬ。其時志ゝ王う目さめ驚。此鼡を取天ひ川さげ
20 春で尓打く多゛可んと志遣る可゛。志ゝ王う心に於もふ様。是程の者
21 共を失遣れ八゛とて。い可程能事の有べきやと云て。助侍き。鼡
22 命をひろひ。更尓我等多く三遣る事尓侍ら春゛。余利耳遊
23 多八ふ連遣る程尓。実能遣可゛丹天侍ると彼志ゝ王うを礼
24 拝して去ぬ。其後志ゝ王う有所丹天王奈尓可ゝ里。既耳難
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 侍れと申ければ。烏此義を実とや心得て。さらはこゑを
02 出さんとて口をはたけけるひまに。終にしゝむらを落しぬ。
03 狐是を取てにげ去ぬ。其ごとく人いかにほむると云共。聊誠
04 とおもふべからず。若此ことを少もしんぜば。まんき出来せんこと
05 疑なし。人のほめん時はつゝしんでなをへりくだるべし
06 第廿ニ 馬といぬとの事
07 或人。ゑのこをいといたはりけるにや。其主人外より帰りし時。
08 彼ゑのこ其ひざにのぼり。むねに手をあげ口のほとりをねぶり
09 まはる。是に依て主人愛する事いやまし也。馬ほのかに此由を
10 見て羨や思ひけん。天晴我もか様にこそし侍らめ[と]思ひ
11 定て。有時主人外より帰ける時。馬主人のむねに飛かゝり。
12 顔をねぶり。尾をふりなどしければ。主人是をみて。甚いかりを
【伊曽保中 〇廿三】
13 なして棒をおつ取て。本の馬やにをし入ける。其ごとく人の親
14 疎をわきまへず。我方より馳走がほこそ。甚以ておかしき
15 事なれ。我程々にしたがつて。其あいさつをなすべし
16 第廿三 しゝわうとねずみの事
17 或時。しゝ王前後も知す臥まどろみける処に。鼡余多指
18 つどひあそび。たはふれける程に。ふしたるしゝわうの上に。鼡一つ
19 とびあがりぬ。其時しゝわう目さめ驚。此鼡を取てひつさげ
20 すでに打くだかんとしけるが。しゝわう心におもふ様。是程の者
21 共を失ければとて。いか程の事の有べきやと云て。助侍き。鼡
22 命をひろひ。更に我等たくみける事に侍らず。余りに遊
23 たはふれける程に。実のけがにて侍ると彼しゝわうを礼
24 拝して去ぬ。其後しゝわう有所にてわなにかゝり。既に難
|