万治版 伊曽保物語 変体仮名

01 尓まとへる物也。能教(よきをしへ)()(まへ)(あり)といへ共。これを見(きゝ)奈可゛
02 ら。多も川(もの)ひとりも奈し。あ奈可゛ち(とり)(をしへ)多る丹毛有べ
03 可ら春゛。人八介多゛もの丹毛をとると(いふ)ことを。令^知(志ら志めん)可゛多めと可や

04   第丗二 (つる)ときつ年との事

05 或田地(あるでんぢ)尓。(つる)ゑじき越もとめ天ゐ多りし尓。古老(こらう)(きつ年)(可れ)
06 を見天。多八゛可ら八゛やと思ひ天。そ八゛に近付(ち可づき)(い王く)。い可に鶴殿(つるどの)
07 御辺(ごへん)八。(奈尓)を可(多づ年)給へる。もしともしく侍ら八゛。我宅所(王可゛多くしよ)へ来らせ
08 よ。珍敷物(めづらしきもの)あ多へんと。い登むつまじく可多らひ遣れ八゛。(つる)え多
09 里や可し古しと。(よろこび)同心(どうしん)春。(きつ年)(いそき)者し里(可へり)天。可ゆ農
10 様成食物(やう奈る志よくもつ)越。あさ起。可那(者゛ち)尓入天。(つる)(む可川)御辺(ごへん)盤。
11 堅物(可多きもの)(きらひ)給ふ奈れ八゛。(王ざと)可ゆをこそとてさゝ遣介れ者゛。(つる)
12 (く多゛ん)(奈可゛)き者し丹天。(く王)ん/\と春れ共(可奈)八ざれ八゛。(きつ年)(これ)

    【伊曽保下      〇丗四】

13 を見天。御辺(ごへん)不食(ふしよく)と見衣多利。可ゝ類珍物(ちんぶつ)を。空捨(む奈しくすて)んよ
14 里八。(王れ)尓給八れと。皆己(み奈をのれ)可゛(とり)くらふ天。き川く王い也とあざ
15 遣れ八゛。(つる)甚無念(者奈者多゛む年ん)に思ひ天。い可(さ満)丹毛。此返報(へん本う)をせ八゛やと
16 思ひ天(可へり)し可゛。屋ゝ。(本ど)()て。(つる)(く多ん)(きつ年)(あひ)天云(やう)(王れ)
17 只今(多ゞい万)珍敷食物(めつらしきしよくもつ)越まうけ多利。来利天(しよく)し給へ可しと(すゝめ)
18 遣れ八゛。(きつ年)春八や先度(せんど)返報(へん本う)可とて。(つる)宅所(多くしよ)(い多)
19 遣り。其時(そのとき)(つる)(くち)の保そき入物(いれもの)尓。匂能(尓本ひよき)くい物越(いれ)天。(きつ年)
20 能(まへ)(をき)侍利介れ八゛。(きつ年)(これ)を見るよ利も。このましく(おもひ)天。
21 入物(いれもの)能万八りを。可那多古奈多へ(まわり)介れ共。可奈八ざるを。(つる)於可
22 し能有様(ありさ満)や。(さて)御辺(ごへん)愚成(をろ可奈る)人可奈。只今(多ゞい万)めしの時分成(ぢふん奈る)尓。
23 何とて(まい)おとら連けるぞ。くい者多してこそま八ん春゛れ。い
24 で喰様(くいやう)(をしへ)んとて。(く多゛ん)(くち)者゛しをさしのべ天。とく/\と(くい)
万治版 伊曽保物語 現字体仮名

01 にまとへる物也。能教(よきをしへ)()(まへ)(あり)といへ共。これを見(きゝ)なが
02 ら。たもつ(もの)ひとりもなし。あながち(とり)(をしへ)たるにも有べ
03 からず。人はけだものにもをとると(いふ)ことを。令^知(しらしめん)がためとかや

04   第丗二 (つる)ときつねとの事

05 或田地(あるでんぢ)に。(つる)ゑじきをもとめてゐたりしに。古老(こらう)(きつね)(かれ)
06 を見て。たばからばやと思ひて。そばに近付(ちかづき)(いわく)。いかに鶴殿(つるどの)
07 御辺(ごへん)は。(なに)をか(たづね)給へる。もしともしく侍らば。我宅所(わがたくしよ)へ来らせ
08 よ。珍敷物(めづらしきもの)あたへんと。いとむつまじくかたらひければ。(つる)えた
09 りやかしこしと。(よろこび)同心(どうしん)す。(きつね)(いそき)はしり(かへり)て。かゆの
10 様成食物(やうなるしよくもつ)を。あさき。かな(ばち)に入て。(つる)(むかつ)御辺(ごへん)は。
11 堅物(かたきもの)(きらひ)給ふなれば。(わざと)かゆをこそとてさゝけければ。(つる)
12 (くだん)(なが)きはしにて。(くわ)ん/\とすれ共(かな)はざれば。(きつね)(これ)

    【伊曽保下      〇丗四】

13 を見て。御辺(ごへん)不食(ふしよく)と見えたり。かゝる珍物(ちんぶつ)を。空捨(むなしくすて)んよ
14 りは。(われ)に給はれと。皆己(みなをのれ)(とり)くらふて。きつくわい也とあざ
15 ければ。(つる)甚無念(はなはだむねん)に思ひて。いか(さま)にも。此返報(へんほう)をせばやと
16 思ひて(かへり)しが。やゝ。(ほど)()て。(つる)(くたん)(きつね)(あひ)て云(やう)(われ)
17 只今(たゞいま)珍敷食物(めつらしきしよくもつ)をまうけたり。来りて(しよく)し給へかしと(すゝめ)
18 ければ。(きつね)すはや先度(せんど)返報(へんほう)かとて。(つる)宅所(たくしよ)(いた)
19 けり。其時(そのとき)(つる)(くち)のほそき入物(いれもの)に。匂能(にほひよき)くい物を(いれ)て。(きつね)
20 の(まへ)(をき)侍りければ。(きつね)(これ)を見るよりも。このましく(おもひ)て。
21 入物(いれもの)のまはりを。かなたこなたへ(まわり)けれ共。かなはざるを。(つる)おか
22 しの有様(ありさま)や。(さて)御辺(ごへん)愚成(をろかなる)人かな。只今(たゞいま)めしの時分成(ぢふんなる)に。
23 何とて(まい)おとられけるぞ。くいはたしてこそまはんずれ。い
24 で喰様(くいやう)(をしへ)んとて。(くだん)(くち)ばしをさしのべて。とく/\と(くい)
著作権はhanamaが有します。 底本・米山堂版画像  京都大学付属図書館 伊曽保物語  
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