万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 徒くし侍連八゛。狐面目を失て立去ぬ。其如。み多゛り尓人を軽八。
02 人ま多をの連越可^軽。人を懇尓せ八゛。人又我を憐者也。是尓
03 依天。い可程毛あ奈徒゛ら累ゝ共。我人を軽こと奈可れ。たとひ
04 愚に春る共。遍りく多゛りて。志多可゛八ん尓八志可じとぞみ衣介る也
05 第丗三 三人よき中能事
06 或人。三人能知音を持遣り。一人を八゛。我身よ利毛大切尓思ふ
07 人也。今一人八。我とひとしく思ふ也。今一人八其次也。此[二]人と常尓
08 友奈ふ事年久し。有時其身尓難義出来時。此知音農
09 本尓行天。助成を蒙らんと春。先我難義を助給へと申
10 遣れ八゛。詮方奈しとて。聊毛助春゛。我とひとしく思ふ人の本
11 尓行天。我難義助給へといへ八゛。わ可゛身もまぎら八しき事
12 あ連八゛。え社助奉るまじ遣れ。糺して門外迄八。御供をこそ
【伊曽保下 〇丗五】
13 申べ遣れと八゛可り也。又其次尓思ひ遣る知音の本尓行て申
14 遣る八。我常尓申通ぜ須゛して。今更我身尓。可奈しきこと乃
15 有とて。申こと八い可八かり奈れ共。我今大事能難義有。助給
16 へ可しと申遣れ八゛。知音申遣る八。仰能ごとく常尓親八志給者
17 祢共。さ須可゛知侍り多る人奈れ八゛。糺手能御前尓て。方人
18 こそ成侍らめ登云天出ぬ。其ごとく。我身能難義と八。臨
19 終能こと也。我身よ利大切尓思ひ。過し多る友と八。財宝の
20 こと也。我身とひとしく思ふ友と八。妻子介んぞくのこと也。其次
21 尓思ふ友と八。王可成。よきやう也。然八゛命終らん時。我財宝尓
22 助介んとい者ゞ。い可で可八助べき。還而あ多とこそ見衣多れ。妻子
23 介んぞくを多のめ八゛とて。い可で可八助可るべき。還て是を以天臨
24 終能さ八りとぞみ衣遣る。此知音。糺手能門外迄と云し八。
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 つくし侍れば。狐面目を失て立去ぬ。其如。みだりに人を軽は。
02 人またをのれを可^軽。人を懇にせば。人又我を憐者也。是に
03 依て。いか程もあなづらるゝ共。我人を軽ことなかれ。たとひ
04 愚にする共。へりくだりて。したがはんにはしかじとぞみえける也
05 第丗三 三人よき中の事
06 或人。三人の知音を持けり。一人をば。我身よりも大切に思ふ
07 人也。今一人は。我とひとしく思ふ也。今一人は其次也。此[二]人と常に
08 友なふ事年久し。有時其身に難義出来時。此知音の
09 本に行て。助成を蒙らんとす。先我難義を助給へと申
10 ければ。詮方なしとて。聊も助ず。我とひとしく思ふ人の本
11 に行て。我難義助給へといへば。わが身もまぎらはしき事
12 あれば。え社助奉るまじけれ。糺して門外迄は。御供をこそ
【伊曽保下 〇丗五】
13 申べけれとばかり也。又其次に思ひける知音の本に行て申
14 けるは。我常に申通ぜずして。今更我身に。かなしきことの
15 有とて。申ことはいかはかりなれ共。我今大事の難義有。助給
16 へかしと申ければ。知音申けるは。仰のごとく常に親はし給は
17 ね共。さすが知侍りたる人なれば。糺手の御前にて。方人
18 こそ成侍らめと云て出ぬ。其ごとく。我身の難義とは。臨
19 終のこと也。我身より大切に思ひ。過したる友とは。財宝の
20 こと也。我身とひとしく思ふ友とは。妻子けんぞくのこと也。其次
21 に思ふ友とは。わか成。よきやう也。然ば命終らん時。我財宝に
22 助けんといはゞ。いかでかは助べき。還而あたとこそ見えたれ。妻子
23 けんぞくをたのめばとて。いかでかは助かるべき。還て是を以て臨
24 終のさはりとぞみえける。此知音。糺手の門外迄と云しは。
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