古活字版 伊曽保物語 変体仮名

01 よつてさん乃ものとも我命をそむ起介流やとけ支
02 里んあ流事可路可ら須須て尓いそ本可以ちめいも
03 あやうくみえ侍利介れ八いそ保ゑい里よをさ川して
04 言上し遣る八我尓へんし乃いと満を多へと申
05 け連八志八らくとて御ゆるさ連を加うむるそ能時
06 いそ保申上介流八ある人いなこをと徒て古路さ
07 [さ]むとてゆき遣る道尓て蝉をこ路さんと須世見う
08 連いてい者く我徒三なうしてい満しめを加うふ利
09 五穀尓わさも奈さ須人にさ八利須る事奈し夏山
10 の葉可く連尓はわ可すさ満し支具世あら八しぬ連
11 八あ川き日可けも王須連井のなくさしめくさと成

【イソホ 上 十六】

12 侍連可ひなくい乃ちを八多され給八ん事奈けき
13 ても奈越あま利あ利と申け連八介尓もとてたち
14 まち[赦め須]其古と具王可須加多加多ち八於可しけ
15 に侍連とわ可をしへに志多可ふ所八国土平安尓し
16 て八ん三んすな保耳と見佐可へて善をも津者ら
17 にをしゆるも能尓てこそ侍連世みとわ連とそ能た
18 可八須と申け連八御門大き尓ゑい可んあ津てさら
19 八登て勅可んをしやめんなされ此宇へ八汝可心尓
20 のそむ事あら八楚うもん申世登仰け連八い楚本
21 徒志んて申あけ介累八わ連尓古となる望奈しわ
22 連さん尓とし久敷あ津て人の下らう尓て侍利介流
古活字版 伊曽保物語 現字体仮名

01 よつてさんのものとも我命をそむきけるやとけき
02 りんある事かろからすすてにいそほかいちめいも
03 あやうくみえ侍りけれはいそほゑいりよをさつして
04 言上しけるは我にへんしのいとまをたへと申
05 けれはしはらくとて御ゆるされをかうむるその時
06 いそほ申上けるはある人いなこをとつてころさ
07 [さ]むとてゆきける道にて蝉をころさんとすせみう
08 れいていはく我つみなうしていましめをかうふり
09 五穀にわさもなさす人にさはりする事なし夏山
10 の葉かくれにはわかすさましきくせあらはしぬれ
11 はあつき日かけもわすれゐのなくさしめくさと成

【イソホ 上 十六】

12 侍れかひなくいのちをはたされ給はん事なけき
13 てもなをあまりありと申けれはけにもとてたち
14 まち[赦めす]其ことくわかすかたかたちはおかしけ
15 に侍れとわかをしへにしたかふ所は国土平安にし
16 てはんみんすなほにとみさかへて善をもつはら
17 にをしゆるものにてこそ侍れせみとわれとそのた
18 かはすと申けれは御門大きにゑいかんあつてさら
19 はとて勅かんをしやめんなされ此うへは汝か心に
20 のそむ事あらはそうもん申せと仰けれはいそほ
21 つしんて申あけけるはわれにことなる望なしわ
22 れさんにとし久敷あつて人の下らうにて侍りける
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