古活字版 伊曽保物語 変体仮名

01 可能鳩を佐ゝんと春あ利心尓思ふやうたゝ今乃恩
02 を於くらふ物をとおもひ可能人のあし尓志ゝかと
03 くひ徒支け連八於ひへあ可徒てさ本を可しこ耳
04 奈け須て介利其も能の色や志流志可流尓者と是を
05 さと里てい川具共なくとひさ利ぬそ能ことく人の
06 恩をうけ多るんも能八い可さ満尓もそ能むくひを
07 せ者やと於もふ心さし越毛つ遍し
08    九  狼と犬乃事
09 有八須と流羊のけいこ尓犬をもちけ連とえしきを
10 春奈本尓あ多へさ連者や世をと路へてそあ利遣る
11 狼こ能よしを三て御辺八な尓とてやせ給ふ楚我尓

【イソホ 下 十一】

12 羊を一疋多へ可能ひ徒しをぬす三と利て尓介ん
13 とき跡よ利於つ可け満ろひたまへこ能事見給ふ
14 なら八御辺尓えし支を給へしとい遍者遣尓もと
15 同心春案乃古と具狼ひ徒しをく王へて尓け去時
16 いぬあとよ利於つ可けま路ひた八連て可へ利介利
17 八須と流い可つて云何とてひ津しをとら連介流
18 そ登いひ介れ八いぬ答云わ連此程ゑしきなくして
19 さん/\尓ひらう徒可ま津里て候そ能ゆへに羊を
20 登られて候といへは介尓もとてそれよ利してえ
21 志支をあ多へぬ又狼来てわ可者可利古とい佐ゝ可
22 た可ふへ可らす今一ひ支ひ津しを給連こ能多ひ
古活字版 伊曽保物語 現字体仮名

01 かの鳩をさゝんとすあり心に思ふやうたゝ今の恩
02 をおくらふ物をとおもひかの人のあしにしゝかと
03 くひつきけれはおひへあかつてさほをかしこに
04 なけすてけり其ものの色やしるしかるにはと是を
05 さとりていつく共なくとひさりぬそのことく人の
06 恩をうけたるんものはいかさまにもそのむくひを
07 せはやとおもふ心さしをもつへし
08    九  狼と犬の事
09 有はすとる羊のけいこに犬をもちけれとえしきを
10 すなほにあたへされはやせをとろへてそありける
11 狼このよしをみて御辺はなにとてやせ給ふそ我に

【イソホ 下 十一】

12 羊を一疋たへかのひつしをぬすみとりてにけん
13 とき跡よりおつかけまろひたまへこの事見給ふ
14 ならは御辺にえしきを給へしといへはけにもと
15 同心す案のことく狼ひつしをくわへてにけ去時
16 いぬあとよりおつかけまろひたはれてかへりけり
17 はすとるいかつて云何とてひつしをとられける
18 そといひけれはいぬ答云われ此程ゑしきなくして
19 さん/\にひらうつかまつりて候そのゆへに羊を
20 とられて候といへはけにもとてそれよりしてえ
21 しきをあたへぬ又狼来てわかはかりこといさゝか
22 たかふへからす今一ひきひつしを給れこのたひ
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