万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 独身と罷成天心や春く侍き。其恩を報可゛多く候へ八゛。可能
02 所よ利奉るべき物を。免給へ可しと云介れ八゛。み可登゛此由叡感有
03 て。可れ可゛のぞ三を。達せん多め。さん能御調物をゆるされ介り
04 第十二 伊曽保里いひや尓居所を作る事
05 いそ本。里いひや尓居所をせしむ。其御赦免を報ぜん可゛為尓。
06 一七日尓此志よ越集奉る。帝えいらん有て。誠尓ふしぎ能
07 思ひを奈し給へり。可ゝ類才人世に有まじとて。あま多のろくを
08 く多゛され介る。いそ本此多満ものを舟につ三。さんへ二度下りけ利。
09 さん能人々此由越聞て。いそ本をむ可へんとて。舟を可ざり。ぶ可゛く
10 を奏して。海中能漁鱗も。驚者゛可りざゝめきあへり。去程尓
11 いそ本程奈くさん尓着天。貴賤えら八須゛召い多゛し。其身盤
12 高座尓上り。い可に人々聞給へ。我此年月。此所に有て。面々の
【伊曽保上 〇十九】
13 御憐を蒙りしこと限奈し。志可の三奈ら須。人能譜代多りし
14 者を。こひゆるされける事。御恩にあら春゛登云事奈し。然を
15 不慮能幸尓よ川天。里いひや能国王よ利。御調物をゆるし
16 給ふ事。是我才智能奈春所也是尓あら春゛ん八。い可で御
17 恩を報春゛べ介んや。是も偏尓。天道能御恵丹天こそ候へ
18 と語遣連八゛。其守護人を初として。さん能こと八申尓をよ八゛須゛
19 あ多り近き国王迄も。いよ/\いそ本を多川と三あへり遣り
20 第十三 商人可年をおと須公事能事
21 或商人。さん尓おゐ天。三貫目能銀子をおと須尓よ川天。
22 札を立天是をもとむ。其札尓云。此可年をひろひ遣る者能有
23 尓於ゐ天八。王れ尓得させよ。其保うびとして。三分一をあ多へん
24 と也。然処尓。或者是をひろふ。我家尓帰り。妻子尓語天云。
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 独身と罷成て心やすく侍き。其恩を報がたく候へば。かの
02 所より奉るべき物を。免給へかしと云ければ。みかど此由叡感有
03 て。かれがのぞみを。達せんため。さんの御調物をゆるされけり
04 第十二 伊曽保りいひやに居所を作る事
05 いそほ。りいひやに居所をせしむ。其御赦免を報ぜんが為に。
06 一七日に此しよを集奉る。帝えいらん有て。誠にふしぎの
07 思ひをなし給へり。かゝる才人世に有まじとて。あまたのろくを
08 くだされける。いそほ此たまものを舟につみ。さんへ二度下りけり。
09 さんの人々此由を聞て。いそほをむかへんとて。舟をかざり。ぶがく
10 を奏して。海中の漁鱗も。驚ばかりざゝめきあへり。去程に
11 いそほ程なくさんに着て。貴賤えらはず召いだし。其身は
12 高座に上り。いかに人々聞給へ。我此年月。此所に有て。面々の
【伊曽保上 〇十九】
13 御憐を蒙りしこと限なし。しかのみならす。人の譜代たりし
14 者を。こひゆるされける事。御恩にあらずと云事なし。然を
15 不慮の幸によつて。りいひやの国王より。御調物をゆるし
16 給ふ事。是我才智のなす所也是にあらずんは。いかで御
17 恩を報ずべけんや。是も偏に。天道の御恵にてこそ候へ
18 と語ければ。其守護人を初として。さんのことは申にをよばず
19 あたり近き国王迄も。いよ/\いそほをたつとみあへりけり
20 第十三 商人かねをおとす公事の事
21 或商人。さんにおゐて。三貫目の銀子をおとすによつて。
22 札を立て是をもとむ。其札に云。此かねをひろひける者の有
23 におゐては。われに得させよ。其ほうびとして。三分一をあたへん
24 と也。然処に。或者是をひろふ。我家に帰り。妻子に語て云。
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