万治版 伊曽保物語
変体仮名
01 さる程尓いそ本。ちうせられ介る由可く連奈し。是尓依天。諸 02 国より不審を可くる事隙奈し。中丹毛えしつとの国。祢多奈 03 をと申帝より。可けさせ給ふ御不審尓云。我虚空ニ一能てん可 04 くを多てん其立様以下を示給へ。御多く三に依天。天可くを忽 05 さうひ川せ八゛。あま多能宝を奉り。其上年々御調物を参春べ 06 し。速ニ此ふしんをひらき給へと書留給ふ。み可登゛此よしえい 07 らん有天。百官介いしやう。其外才智学藝尓。多づさ八る程の 08 者共を召出され。此由問給へ共。少も不審をひらくこと奈し。是 09 尓依天御婦゛きやうと聞えける。上下万民奈三居天。奈げ 10 き可なし三あへり。主上御可奈し三能あまり。いそ本をうしなひ 11 給ふ事。我奈須わざと云乍。偏尓我国能亡ん基也。もしこ能 12 ふしんをひら可せ給八須゛八。後日のち志゛よく者可里可゛多し。い可尓/\
【伊曽保上 〇廿七】
13 と者゛可り丹天。両眼よ利御奈三多゛可゛ち丹天わ多らせ給ふ
14 第二十 えり見本いそ本可゛事をそうもん能事
15 ある時えり見本。ひそ可にそうもん申ける八。御奈げき越見 16 奉るに。御命もあやうく見えさせ侍る也。今八何を可つゝ三申べ 17 き。いそ本ちう春べき由仰付ら連候時。余尓おしく存。於本 18 屋け能私をも川天。今迄多春け置天候。いちよくの者を 19 多春け置事。還天我徒三も軽可ら須゛候へ共。加ゝ類不 20 審も出来る奈ら八゛。国中のさ八りと毛成奈んと。思ひ侍べ 21 連八゛。助天こそ候へと申遣連八゛。み可登゛斜奈ら春゛悦こ者゛せ 22 給ひ。古は寔丹天侍るや。疾可連越参らせよとて。還て 23 御感尓預里し上八。敢天勅可ん能さ多丹毛奈し。是尓依 24 て。いそ本をめし可へさる。いそ本参内して。御前尓畏。御門此由
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 さる程にいそほ。ちうせられける由かくれなし。是に依て。諸 02 国より不審をかくる事隙なし。中にもえしつとの国。ねたな 03 をと申帝より。かけさせ給ふ御不審に云。我虚空に一のてんか 04 くをたてん其立様以下を示給へ。御たくみに依て。天かくを忽 05 さうひつせば。あまたの宝を奉り。其上年々御調物を参すべ 06 し。速に此ふしんをひらき給へと書留給ふ。みかど此よしえい 07 らん有て。百官けいしやう。其外才智学藝に。たづさはる程の 08 者共を召出され。此由問給へ共。少も不審をひらくことなし。是 09 に依て御ぶきやうと聞えける。上下万民なみ居て。なげ 10 きかなしみあへり。主上御かなしみのあまり。いそほをうしなひ 11 給ふ事。我なすわざと云乍。偏に我国の亡ん基也。もしこの 12 ふしんをひらかせ給はずは。後日のちじよくはかりがたし。いかに/\
【伊曽保上 〇廿七】
13 とばかりにて。両眼より御なみだがちにてわたらせ給ふ
14 第二十 えりみほいそほが事をそうもんの事
15 ある時えりみほ。ひそかにそうもん申けるは。御なげきを見 16 奉るに。御命もあやうく見えさせ侍る也。今は何をかつゝみ申べ 17 き。いそほちうすべき由仰付られ候時。余におしく存。おほ 18 やけの私をもつて。今迄たすけ置て候。いちよくの者を 19 たすけ置事。還て我つみも軽からず候へ共。かゝる不 20 審も出来るならば。国中のさはりとも成なんと。思ひ侍べ 21 れば。助てこそ候へと申ければ。みかど斜ならず悦こばせ 22 給ひ。こは寔にて侍るや。疾かれを参らせよとて。還て 23 御感に預りし上は。敢て勅かんのさたにもなし。是に依 24 て。いそほをめしかへさる。いそほ参内して。御前に畏。御門此由
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