万治版 伊曽保物語 変体仮名
図5
【伊曽保上 〇廿六】
01 里くう累春の帝王に心をあ者せ。春で尓敵と罷成候と。奏
02 し遣れ共帝敢天志んし給は須゛。可る可゛ゆへ尓えうぬ須二度
03 奉書を作りて。えいらん尓備。帝此由御らん有て。扨盤疑
04 所奈し。急ちうせんとて。恵りみ本と云臣下尓仰天。いそ本を
05 ちう春べきよし里ん介ん有。恵り見本勅諚の旨を承て。いそ
06 本能多ちへをしよせ。則いそ本を可らめ取天。既尓ちうせんと
07 志多りける可゛。能々心尓思ふ様。世に可く連奈き才仁を。うし奈八ん
08 も心うし。多とひ我命八捨る共。扶者゛やと思ひ。傍尓ふる幾
09 く[八]ん可く有ける尓。いそ本を押入天。我宿に帰り身をきよめ
10 急内裏へ者せ参天。いそ本こそちう仕候と申上遣れ八゛。帝
11 もいとゞ御涙尓むせ八゛せ給ひ。於しませ給ふ毛。御理とぞみ衣尓ける
12 第十九 祢多奈を帝王不審能事
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
図5
【伊曽保上 〇廿六】
01 りくうるすの帝王に心をあはせ。すでに敵と罷成候と。奏
02 しけれ共帝敢てしんし給はず。かるがゆへにえうぬす二度
03 奉書を作りて。えいらんに備。帝此由御らん有て。扨は疑
04 所なし。急ちうせんとて。ゑりみほと云臣下に仰て。いそほを
05 ちうすべきよしりんけん有。ゑりみほ勅諚の旨を承て。いそ
06 ほのたちへをしよせ。則いそほをからめ取て。既にちうせんと
07 したりけるが。能々心に思ふ様。世にかくれなき才仁を。うしなはん
08 も心うし。たとひ我命は捨る共。扶ばやと思ひ。傍にふるき
09 く[は]んかく有けるに。いそほを押入て。我宿に帰り身をきよめ
10 急内裏へはせ参て。いそほこそちう仕候と申上ければ。帝
11 もいとゞ御涙にむせばせ給ひ。おしませ給ふも。御理とぞみえにける
12 第十九 ねたなを帝王不審の事
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