万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 義尓及遣る時。鼡此由を聞て。いそぎ志ゝ王うのまへ尓者せ参。
02 い可に志ゝ王聞召せ。い川ぞや我等を多春け給ふ御恩尓。今又
03 助侍らんとて。彼王奈能端々を喰切志ゝ王うを春くひ天介゛利
04 其ごとく。あやしの物成共。志多しく奈つけ侍らん尓い可で可其徳
05 を得ざらん。只威勢あ連八゛とて。保゛んげ能者をいやしむべ可ら寸゛
06 第廿四 徒者゛めと諸鳥との事
07 或所に徒者゛めと。万能鳥と集居ける程尓。つ者゛め申様。古ゝ尓
08 麻と云物まく所有。各是を引春て給へ可しと歎遣れ共。諸鳥
09 是尓く三せぬの三奈ら春゛。還て徒者゛めを嘲。徒者゛め申八。御辺
10 達八何を笑給ぞ。此麻と申八。をと云物に奈ん成天王奈ぞ。可
11 徒らそ。とて我等可゛多め尓八大敵也。各八後日能王ざ八ひを知
12 給八須゛と申遣れ共。諸鳥共同心せ春゛。其時徒八゛め申様。所詮御
【伊曽保中 〇廿四】
13 辺達登向後く三春る事有べ可ら春゛とて。諸鳥尓替て燕八
14 人能内尓。巣をくふ事も。是や初丹天有遣る。其如あま多の
15 人の中尓。秀てよき道を志め春登いへ共。用春゛八。まい天ふと
16 ころ丹須。又い可に人同屋う尓悪しといふと毛。そのあち者ひを。
17 奈め古ゝ路見よ。智者能いふこと奈に可はあし可るべきや
18 第廿五 可八川゛主君をのぞむ事
19 あてえる須と云所に。彼主君奈くて何事も心に任奈ん有
20 遣る。其所能人余尓本こ利遣る尓主人を定者や奈どゝ。きて
21 うして春で尓。主人をぞ定ける。故尓いさゝ可能ひ可゛ことあ連者゛。
22 其人罪科尓行。是尓依天里能人尓主君を定介るを。悔悲
23 め共可ひ奈し。其比いそ本其所に至利ぬ。所能人々此ことを語るに。
24 其善悪を八゛い者須゛多とへを述天云。昔或川尓あま多農蛙
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 義に及ける時。鼡此由を聞て。いそぎしゝわうのまへにはせ参。
02 いかにしゝ王聞召せ。いつぞや我等をたすけ給ふ御恩に。今又
03 助侍らんとて。彼わなの端々を喰切しゝわうをすくひてげり
04 其ごとく。あやしの物成共。したしくなつけ侍らんにいかでか其徳
05 を得ざらん。只威勢あればとて。ぼんげの者をいやしむべからず
06 第廿四 つばめと諸鳥との事
07 或所につばめと。万の鳥と集居ける程に。つばめ申様。こゝに
08 麻と云物まく所有。各是を引すて給へかしと歎けれ共。諸鳥
09 是にくみせぬのみならず。還てつばめを嘲。つばめ申は。御辺
10 達は何を笑給ぞ。此麻と申は。をと云物になん成てわなぞ。か
11 つらそ。とて我等がためには大敵也。各は後日のわざはひを知
12 給はずと申けれ共。諸鳥共同心せず。其時つばめ申様。所詮御
【伊曽保中 〇廿四】
13 辺達と向後くみする事有べからずとて。諸鳥に替て燕は
14 人の内に。巣をくふ事も。是や初にて有ける。其如あまたの
15 人の中に。秀てよき道をしめすといへ共。用ずは。まいてふと
16 ころにす。又いかに人同やうに悪しといふとも。そのあちはひを。
17 なめこゝろみよ。智者のいふことなにかはあしかるべきや
18 第廿五 かはづ主君をのぞむ事
19 あてえるすと云所に。彼主君なくて何事も心に任なん有
20 ける。其所の人余にほこりけるに主人を定はやなどゝ。きて
21 うしてすでに。主人をぞ定ける。故にいさゝかのひがことあれば。
22 其人罪科に行。是に依て里の人に主君を定けるを。悔悲
23 め共かひなし。其比いそほ其所に至りぬ。所の人々此ことを語るに。
24 其善悪をばいはずたとへを述て云。昔或川にあまたの蛙
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