万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 可ひ/\敷。あ多を毛作天゛。やゝも春れ八゛人尓殺さる。志可の三奈ら
02 春゛。春過夏去て秋風多ちぬるころ八。漸つ者゛さを叩。可しら
03 を奈でゝ手春る様也。秋深成尓随天徒者゛さよ利腰ぬ
04 け天。い登見苦敷とぞ申侍利き。我身八徒多奈き物奈れ
05 [者゛]。春秋能うつるを毛知春゛。豊尓くらし侍る也。猥尓人をあ
06 奈どり給ふ物哉と。者ぢ志められ立去ぬ。其如聊我三尓王ざ
07 あれ者゛とて。猥尓人を[怪]こと奈可れ。可れ又をの連を[怪]物奈利
08 第廿九 い多ち能事
09 或時鼬。鼡能王奈尓可ゝ里遣る事有遣利。其主是を三て
10 打殺さんと須。鼬さゝへ天申ける八い可に主人聞召せ。我を
11 ころし給ふべき理奈し其故八。御内尓者いく王い春る鼡と
12 云徒ものを八゛本ろ保゛し候。其上聊御さ八利と成事候八須゛と
【伊曽保中 〇廿七】
13 申遣れ八゛。主答云何を以天助べき道理有や。鼡を保ろ本゛
14 春登云も。我潤色尓あら春゛。汝可゛餌食とせん可゛為也謂奈し
15 とて。打殺ぬ。其如我難義出来春るとて。あ八てゝ詞をふ^可^云
16 初終を思案春べし。命を失の三奈ら須゛。後日の嘲口惜と也
17 第三十 むま登志ゝ王う能事
18 有時。馬。野辺尓出天草を者げ三遣る所尓。志ゝ王ひそ可
19 尓是を三て。彼馬を食せんと思し可゛先ぶ里やくを廻して社
20 と思。馬能前尓可しこま里て申遣る八。御辺此程何事を可八
21 習給ふぞ。我八此比醫学を奈ん仕候と申介れ八゛。馬。志ゝ王の
22 悪念を覚天。我も多八゛可ら者゛やと思ひ。志ゝ王尓向天申
23 遣る八。扨々御辺八羨毛醫学を奈ら八せ給ふ物可奈。幸我
24 足尓くゐせ越ふ三立天煩也。御らんじて多べ可しと奈ん云介る。
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 かひ/\敷。あたをも作で。やゝもすれば人に殺さる。しかのみなら
02 ず。春過夏去て秋風たちぬるころは。漸つばさを叩。かしら
03 をなでゝ手する様也。秋深成に随てつばさより腰ぬ
04 けて。いと見苦敷とぞ申侍りき。我身はつたなき物なれ
05 [ば]。春秋のうつるをも知ず。豊にくらし侍る也。猥に人をあ
06 などり給ふ物哉と。はぢしめられ立去ぬ。其如聊我みにわざ
07 あればとて。猥に人を[怪]ことなかれ。かれ又をのれを[怪]物なり
08 第廿九 いたちの事
09 或時鼬。鼡のわなにかゝりける事有けり。其主是をみて
10 打殺さんとす。鼬さゝへて申けるはいかに主人聞召せ。我を
11 ころし給ふべき理なし其故は。御内にはいくわいする鼡と
12 云徒ものをばほろぼし候。其上聊御さはりと成事候はずと
【伊曽保中 〇廿七】
13 申ければ。主答云何を以て助べき道理有や。鼡をほろぼ
14 すと云も。我潤色にあらず。汝が餌食とせんが為也謂なし
15 とて。打殺ぬ。其如我難義出来するとて。あはてゝ詞をふ^可^云
16 初終を思案すべし。命を失のみならず。後日の嘲口惜と也
17 第三十 むまとしゝ王うの事
18 有時。馬。野辺に出て草をはげみける所に。しゝ王ひそか
19 に是をみて。彼馬を食せんと思しが先ぶりやくを廻して社
20 と思。馬の前にかしこまりて申けるは。御辺此程何事をかは
21 習給ふぞ。我は此比醫学をなん仕候と申ければ。馬。しゝ王の
22 悪念を覚て。我もたばからばやと思ひ。しゝ王に向て申
23 けるは。扨々御辺は羨も醫学をならはせ給ふ物かな。幸我
24 足にくゐせをふみ立て煩也。御らんじてたべかしとなん云ける。
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