万治版 伊曽保物語 変体仮名

01 の奈き(お本可三)能。四川(あし)と。徒ら能(可王)(のこ)し。生皮(いき可゛王)を者ぎて
02 めさせ給八ゞ。(多やすく)平癒(へいゆ)春登(つ多へ)て候。(多ゞし)()の奈き(お本可三)八有べう
03 も候八須゛と申遣れ八゛。志ゝ(王う)是こそ(こゝ)にあ連登。彼狼(可のお本可三)待所(まつところ)
04 尓。(奈尓)心奈く(まいり)候ひぬ。志ゝ(王う)(ひき)よせ天いひしことく尓(可王)
05 者い天゛。(いのち)八゛可利を(たすけ)尓遣利。其後(そののち)有山(あるや万)能そ八に。(く多゛ん)(きつ年)
06 詠居(奈可゛めゐ)遣る折節(をりふし)(お本可三)もそこ越(とを)る。(きつ年)申遣る八。(これ)(とを)
07 せ給ふ八(多れ)に天(王多)らせ給ふぞ。可(本と)あつき炎天(えんてん)尓。頭巾(づきん)を可
08 徒゛き。多びを者き。ゆ可゛けをさい天見衣給ふ八。(もし)ひ可゛()
09 てもや候らん。五(多い)を三れ八゛あ可者多゛可丹天。あぶ。(者ち)(者い)(あり)。奈ん
10 ど(いふ)物。春き間奈く(とり)つき多利。(多ゝし)きる物能可多丹天者゛し
11 侍る可。能々(よく/\)見候へ八゛。い川ぞや志ゝ(王う)尓。よし奈き訴訟(そせう)志給ふ。
12 (お本可三)奈利とてあざ遣利介る。(そのごとく)見多゛利尓人をざんそう

    【伊曽保下      〇十】

13 春れ八゛。人ま多(王れ)をざんそう春る。春来(者るき多る)時八。(ふゆ)ま多可くれ怒。
14 (奈つ)春ぎぬ連ば。(あき)可ぜ(多ち)ぬ。ひと利何もの可()に本こるべきや

15     第七  お保可三(ゆめ)物可多利能事

16 或時狼夢(あるときお本可三ゆめ)尓。高位(可うゐ)(ぢう)して。あく(まで)(しよく)春登見多利遣類
17 明日(三やう尓ち)(お本可三)山を出時(いつるとき)。道能(本とり)(いの志ゝ)(者ら)王多有。春八やめで多
18 し者やゑじき能有遣るよ登(よろこび)さ可へ遣る可゛。いや/\これ盤
19 (者ら)(どく)とて。(よき)ゑじき越く八めとこそ。そこ越(すぎ)(ゆき)怒。
20 或山(あるやま)能そ八に。()をつ連多る(むま)有。(お本可三)(よし)越見天。(これ)こそ(よき)
21 ゑじき奈れ。く八者゛やと心()天。(むま)(む可ひ)天申遣る八。(奈んぢ)可゛子越
22 (王可゛)ゑじき登[と]奈須べし心()よ登(いひ)遣れ八゛。馬答云(むまこ多へてい王く)。とも可く毛
23 (於本せ)尓こそ志多可゛八めとてゐ多利遣る可゛。(於本可三)尓申遣る。(うけ多満八り)候へ八゛げ
24 きやう能上手(じやうず)と申。(王れ)(本ど)(あし)尓くゐぜ越ふ三(多て)天候へ八゛。(をそれ)
万治版 伊曽保物語 現字体仮名

01 のなき(おほかみ)の。四つ(あし)と。つらの(かわ)(のこ)し。生皮(いきがわ)をはぎて
02 めさせ給はゞ。(たやすく)平癒(へいゆ)すと(つたへ)て候。(たゞし)()のなき(おほかみ)は有べう
03 も候はずと申ければ。しゝ(わう)是こそ(こゝ)にあれと。彼狼(かのおほかみ)待所(まつところ)
04 に。(なに)心なく(まいり)候ひぬ。しゝ(わう)(ひき)よせていひしことくに(かわ)
05 はいで。(いのち)ばかりを(たすけ)にけり。其後(そののち)有山(あるやま)のそはに。(くだん)(きつね)
06 詠居(ながめゐ)ける折節(をりふし)(おほかみ)もそこを(とを)る。(きつね)申けるは。(これ)(とを)
07 せ給ふは(たれ)にて(わた)らせ給ふぞ。か(ほと)あつき炎天(えんてん)に。頭巾(づきん)をか
08 づき。たびをはき。ゆがけをさいて見え給ふは。(もし)ひが()
09 てもや候らん。五(たい)をみればあかはだかにて。あぶ。(はち)(はい)(あり)。なん
10 ど(いふ)物。すき間なく(とり)つきたり。(たゝし)きる物のかたにてばし
11 侍るか。能々(よく/\)見候へば。いつぞやしゝ(わう)に。よしなき訴訟(そせう)し給ふ。
12 (おほかみ)なりとてあざけりける。(そのごとく)みだりに人をざんそう

    【伊曽保下      〇十】

13 すれば。人また(われ)をざんそうする。春来(はるきたる)時は。(ふゆ)またかくれぬ。
14 (なつ)すぎぬれば。(あき)かぜ(たち)ぬ。ひとり何ものか()にほこるべきや

15     第七  おほかみ(ゆめ)物かたりの事

16 或時狼夢(あるときおほかみゆめ)に。高位(かうゐ)(ぢう)して。あく(まで)(しよく)すと見たりける
17 明日(みやうにち)(おほかみ)山を出時(いつるとき)。道の(ほとり)(いのしゝ)(はら)わた有。すはやめでた
18 しはやゑじきの有けるよと(よろこび)さかへけるが。いや/\これは
19 (はら)(どく)とて。(よき)ゑじきをくはめとこそ。そこを(すぎ)(ゆき)ぬ。
20 或山(あるやま)のそはに。()をつれたる(むま)有。(おほかみ)(よし)を見て。(これ)こそ(よき)
21 ゑじきなれ。くはばやと心()て。(むま)(むかひ)て申けるは。(なんぢ)が子を
22 (わが)ゑじき登[と]なすべし心()よと(いひ)ければ。馬答云(むまこたへていわく)。ともかくも
23 (おほせ)にこそしたがはめとてゐたりけるが。(おほかみ)に申ける。(うけたまはり)候へばげ
24 きやうの上手(じやうず)と申。(われ)(ほど)(あし)にくゐぜをふみ(たて)て候へば。(をそれ)
著作権はhanamaが有します。 底本・米山堂版画像  京都大学付属図書館 伊曽保物語  
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