万治版 伊曽保物語 変体仮名
図13
【伊曽保下 〇廿二】
01 古ら春人八。い川毛悪人ぞ登人是を疎春゛。只人八愚丹して。他
02 人尓ぬ可連多るに志く八奈し。可まひ天末能よ尓人をぬ可んと思者じ
03 第十七 祢春゛三ど毛多゛ん可うの事
04 或時鼡。老若男女。相集せんぎし遣る八。い川毛猫と云徒
05 者に亡さるゝ時。千度くやめ共其益奈し。彼猫。声を立る可
06 然ら春゛八。足音多可く奈どせ八゛。可年天用心春べ遣れ共。ひそ可
07 尓近付程に。ゆ多゛んしてとらるゝの三也。い可ゞせんと云介れ八゛。古老
08 能鼡春ゝ三出申遣る八。詮春゛る処猫能首尓。鈴を付て置
09 侍ら八゛。易知奈んと云。皆々尤と同心春。然ら八゛此内よ利誰出
10 て可。猫能首尓鈴を付給八んやと云尓。上臈鼡よ利下鼡
11 尓至迄。我付んと云物奈し。是尓依天其度能きでう。[事]
12 を八らで多いさんしぬ。其如人能遣奈げ多゛て云も。畳農上
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
図13
【伊曽保下 〇廿二】
01 こらす人は。いつも悪人ぞと人是を疎ず。只人は愚にして。他
02 人にぬかれたるにしくはなし。かまひて末のよに人をぬかんと思はじ
03 第十七 ねずみどもだんかうの事
04 或時鼡。老若男女。相集せんぎしけるは。いつも猫と云徒
05 者に亡さるゝ時。千度くやめ共其益なし。彼猫。声を立るか
06 然らずは。足音たかくなどせば。かねて用心すべけれ共。ひそか
07 に近付程に。ゆだんしてとらるゝのみ也。いかゞせんと云ければ。古老
08 の鼡すゝみ出申けるは。詮ずる処猫の首に。鈴を付て置
09 侍らば。易知なんと云。皆々尤と同心す。然らば此内より誰出
10 てか。猫の首に鈴を付給はんやと云に。上臈鼡より下鼡
11 に至迄。我付んと云物なし。是に依て其度のきでう。[事]
12 をはらでたいさんしぬ。其如人のけなげだて云も。畳の上
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