万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 悉く給八りぬ登。夢尓見侍ると云天。彼肴能入物をあけ
02 て見連八゛。いひしことく尓少毛残さ須゛。其時二人能者笑天云。彼
03 いそ本能才覚八。く王んのう可゛。こふ処尓あら須゛と弥崇ひ侍る也
04 第十七 いそ本諸国をめぐる事
05 去程尓いそ本。それより諸国をめぐりありきけるに。者いらう
06 丹や能国。里くる須と申帝王。是を愛し給ふ事限奈し。国
07 王能もて奈し給ふ上八。百官介いしやうを初として。あやし能者尓
08 至ま天゛も。是をもて奈須こと限奈し。其此奈らひとして。余能
09 国能帝王よ利。種々能不審を可けあ者せ給ふ尓。若其不審
10 をひら可せ給八年八゛。其返報尓。保うろくを奉る。志可の三奈ら
11 春゛。不審ひら可せ給八怒帝王を八゛。ひとへ尓其臣下能ごとし。
12 然尓依天。諸国能ふしんまち/\也。然るに者ひらう丹や能帝
【伊曽保上 〇廿五】
13 王へ可けさせ給ふ婦志ん。ひら可せ給八ぬこと奈し是偏尓いそ本
14 可゛才覚とぞ見衣尓介る。又者ひらう尓やより。よの国へ可け給ふ
15 婦志ん八。いそ本可゛かけ給ふ不審奈れ八゛。一川もひら可せ給ふ国王
16 奈し。彼返報として。あま多の財宝をとらせ給ふ。其恵尓依天。
17 いそ本もめで度栄遣ること限奈し。才智八是朽せぬ宝とぞ三由
18 第十八 いそ本養子を佐多゛むる事
19 さる程尓。いそ本い三しくさ可へ遣れ共。年多け齢をとろふ累
20 ま天゛実子奈し。去尓よ川てえうぬ須と云侍を養ひ天。
21 我あ登を徒可゛せんと須。或時えうぬ春大奈る罪科有介り。
22 心におもふ様。此事いそ本知る奈ら八゛。多ちまち国王へ奏聞
23 して。い可那る流罪尓可おこ奈八れんと思ひ。せん春゛る所。只いそ
24 本をうし奈八ゞやと思ふ心出来天。奉書を調。我親いそ本社。
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 悉く給はりぬと。夢に見侍ると云て。彼肴の入物をあけ
02 て見れば。いひしことくに少も残さず。其時二人の者笑て云。彼
03 いそほの才覚は。くわんのうが。こふ処にあらずと弥崇ひ侍る也
04 第十七 いそほ諸国をめぐる事
05 去程にいそほ。それより諸国をめぐりありきけるに。は[い]らう
06 にやの国。りくるすと申帝王。是を愛し給ふ事限なし。国
07 王のもてなし給ふ上は。百官けいしやうを初として。あやしの者に
08 至までも。是をもてなすこと限なし。其此ならひとして。余の
09 国の帝王より。種々の不審をかけあはせ給ふに。若其不審
10 をひらかせ給はねば。其返報に。ほうろくを奉る。しかのみなら
11 ず。不審ひらかせ給はぬ帝王をば。ひとへに其臣下のごとし。
12 然に依て。諸国のふしんまち/\也。然るにはひらうにやの帝
【伊曽保上 〇廿五】
13 王へかけさせ給ふふしん。ひらかせ給はぬことなし是偏にいそほ
14 が才覚とぞ見えにける。又はひらうにやより。よの国へかけ給ふ
15 ふしんは。いそほがかけ給ふ不審なれば。一つもひらかせ給ふ国王
16 なし。彼返報として。あまたの財宝をとらせ給ふ。其恵に依て。
17 いそほもめで度栄けること限なし。才智は是朽せぬ宝とぞみゆ
18 第十八 いそほ養子をさだむる事
19 さる程に。いそほいみしくさかへけれ共。年たけ齢をとろふる
20 まで実子なし。去によつてえうぬすと云侍を養ひて。
21 我あとをつがせんとす。或時えうぬす大なる罪科有けり。
22 心におもふ様。此事いそほ知るならば。たちまち国王へ奏聞
23 して。いかなる流罪にかおこなはれんと思ひ。せんずる所。只いそ
24 ほをうしなはゞやと思ふ心出来て。奉書を調。我親いそほ社。
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