万治版 伊曽保物語 変体仮名
図7
【伊曽保中 〇十五】
01 可く天多可゛ひ尓川能辺尓あゆ三寄て。終尓水能中へ入ぬ。鼡
02 あ者てさ八ひ天゛蛙に申介る八。情奈し御辺を八。様々尓もて奈し
03 侍ける尓。我を八゛可ゝ類うきめにあ者せ給ふやと。徒ぶやきけ
04 累処尓。とび此よしを三て。い三しきゑじき可那と。二ツ奈可゛ら徒
05 可三終にゑじき登奈して遣゛利。其ごとくい万いそ本八。鼡の様
06 丹天御辺達尓。能道を教侍らんと春れ共。御辺達盤蛙
07 能ことく尓。我をいましめ給ふ也。然といへ共。とびと奈る。者いらう
08 丹や[能]えし徒との。国王よ利定天島越責らるべしと申け
09 連八゛。聞もあへ春゛傍若無人能や川者゛ら可゛。天下無双能才人を。
10 加゛ゞ多る山能巌よ利。取天下尓をし落春。其時いそ本果に
11 遣ると可や。案能ごとく。西国能帝王よ利。武士尓仰て。彼島を
12 責ら連ける。それよ利して彼いそ本可゛物語を。世に伝へ侍る也
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
図7
【伊曽保中 〇十五】
01 かくてたがひに川の辺にあゆみ寄て。終に水の中へ入ぬ。鼡
02 あはてさはひで蛙に申けるは。情なし御辺をは。様々にもてなし
03 侍けるに。我をばかゝるうきめにあはせ給ふやと。つぶやきけ
04 る処に。とび此よしをみて。いみしきゑじきかなと。二ツながらつ
05 かみ終にゑじきとなしてげり。其ごとくいまいそほは。鼡の様
06 にて御辺達に。能道を教侍らんとすれ共。御辺達は蛙
07 のことくに。我をいましめ給ふ也。然といへ共。とびとなる。はいらう
08 にや[の]えしつとの。国王より定て島を責らるべしと申け
09 れば。聞もあへず傍若無人のやつばらが。天下無双の才人を。
10 がゞたる山の巌より。取て下にをし落す。其時いそほ果に
11 けるとかや。案のごとく。西国の帝王より。武士に仰て。彼島を
12 責られける。それよりして彼いそほが物語を。世に伝へ侍る也
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