万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 有しを。助置こそ汝可゛多め丹八報恩也と云遣れ八゛。鶴力
02 尓及八゛須゛立さ利ぬ。其如悪人尓多いして。能事を教といへども。
03 還てそ能徒三を奈せ利。志可りといへ共。人尓多いして能事を
04 教ん時八。天道尓対し奉て御保うこうと於もふ遍゛し
05 第十七 志ゝ王うとろ者゛との事
06 或志ゝ王う通遣る処を。ろ者゛是をあざ遣る。志ゝ王う此由
07 を聞て。あ川者れくひころしてんやとい可り遣る可゛志八゛しとて
08 ゆる須心出来ける。其故八我と。ひとしき物丹毛あら八゛其諍
09 もをよひ侍へ遣れ共。可連ら可゛ごとく。春くせ。徒多奈き物尓。
10 あ多ら口越遣可゛さんこと毛。さ須可゛奈れ八゛とてゆるし侍利き。
11 其如。無智能輩に向天是非を不^可^論といへる心成べし。ろ者゛と八。
12 無智能輩をさ須べし。志ゝ王うと八。才智議然る者を多とふ也
【伊曽保中 〇二十】
13 第十八 京と。田舎能祢春゛三能事
14 或時都能祢須゛三。可多田舎尓く多゛利侍利ける。ゐ奈可能鼡共
15 是を師傅こと限奈し。是尓依天ゐ奈可能鼡を召具して。
16 上洛春。志可毛其住所八都能。うとき者能蔵丹天奈ん有
17 遣る。故尓食物多川天ともしき事奈し。都能鼡申ける八。
18 上方尓八可く奈んい三しき事の三お者須連八゛。いやしきゐ
19 奈可尓住給ひ天。何尓可八志給ふべき奈ど語奈ぐさむ処尓。
20 家主蔵尓用能事有天俄尓戸を開く。京能鼡盤本
21 よ利案内者奈れ八穴尓尓げ入ぬ。田舎能鼡八。無゛案内奈れ八゛。
22 [。]あ八てさ八げど毛。可く連所も奈く可らうして。命計扶可里
23 ける。其後田舎能鼡参会して此よし語やう。御辺八都耳
24 い三しき事の三有との給へ共。多ゞ今能き徒゛可ひ。一夜者く
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 有しを。助置こそ汝がためには報恩也と云ければ。鶴力
02 に及ばず立さりぬ。其如悪人にたいして。能事を教といへども。
03 還てそのつみをなせり。しかりといへ共。人にたいして能事を
04 教ん時は。天道に対し奉て御ほうこうとおもふべし
05 第十七 しゝわうとろばとの事
06 或しゝわう通ける処を。ろば是をあざける。しゝわう此由
07 を聞て。あつはれくひころしてんやといかりけるがしばしとて
08 ゆるす心出来ける。其故は我と。ひとしき物にもあらば其諍
09 もをよひ侍へけれ共。かれらがごとく。すくせ。つたなき物に。
10 あたら口をけがさんことも。さすがなればとてゆるし侍りき。
11 其如。無智の輩に向て是非を不^可^論といへる心成べし。ろばとは。
12 無智の輩をさすべし。しゝわうとは。才智議然る者をたとふ也
【伊曽保中 〇二十】
13 第十八 京と。田舎のねずみの事
14 或時都のねずみ。かた田舎にくだり侍りける。ゐなかの鼡共
15 是を師傅こと限なし。是に依てゐなかの鼡を召具して。
16 上洛す。しかも其住所は都の。うとき者の蔵にてなん有
17 ける。故に食物たつてともしき事なし。都の鼡申けるは。
18 上方にはかくなんいみしき事のみおはすれば。いやしきゐ
19 なかに住給ひて。何にかはし給ふべきなど語なぐさむ処に。
20 家主蔵に用の事有て俄に戸を開く。京の鼡は本
21 より案内者なれは穴ににげ入ぬ。田舎の鼡は。無゛案内なれば。
22 [。]あはてさはげども。かくれ所もなくからうして。命計扶かり
23 ける。其後田舎の鼡参会して此よし語やう。御辺は都に
24 いみしき事のみ有との給へ共。たゞ今のきづかひ。一夜はく
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