万治版 伊曽保物語 変体仮名
01 者川と云伝るごとく也。田舎丹天八事多ら八ぬ事も侍れ
02 共。可ゝ類きづ可ひ奈しと奈ん申ける。其ごとくいや志きもの八。
03 可三つ可多能人尓友奈ふ事奈可れ。若志ゐ天是を友奈ふ時盤
04 。い多川可゛八しき事の三尓あら春゛。多ちまち王ざ八ひ出来へし
05 。貧を多のしむ者八万事還てまんぞく春登見衣多利。可る
06 可゛ゆへ尓ことわざ尓い者く。ひんらくとこそいひ者んべ利き
07 第十九 きつ年とわしとの事
08 或時鷲。我こ能餌食と奈さん可゛多め。狐能子をう八゛ひ取天
09 。とびさ利ぬ。狐天にあふぎ地尓臥て奈げき。可奈しむといへ共
10 。其可ひ奈し。きつ年心におもふやう。い可様尓鷲能あ多尓八。煙尓
11 志く事八奈しとて。柴と云物を鷲能巣の本尓集天。火を
12 付遣れ八゛。鷲能子保の本能中尓可奈しむ有様誠尓哀尓み衣
【伊曽保中 〇廿一】
13 尓遣る。其時鷲。千度可奈しめ共可ひも奈し。終焼落され天
14 。忽狐尓其子をくらはる。其ごとく当座を我。可川天奈連八゛と
15 て。下さ満能者にあ多を奈し。立事奈可れ。人能思ひの積ぬれ八゛
16 。終尓八い川゛くに可。可^遁高堤も蟻能穴よ利。崩初累と奈ん云介る
17 第二十 鷲と。可多徒ぶ利能事
18 或時鷲。可多徒ぶ利をくら八者゛やと思ひ遣れ共。い可ん共せん
19 事を志ら春゛。於もひ王川゛らふ処尓。烏傍よ利春ゝ三出天
20 申遣る八。此可多徒ふ利保ろ本゛さんことい登や春き事尓天
21 侍る。我申やう尓志給ひ天後。我尓其半分をあ多へ給八ゞ。教
22 奉らんと云。鷲うけ可゛ふ天其故を問尓。烏申やう。可多徒ぶ利
23 を高所よ利おとし給八ゞ。其可ら忽尓く多゛け奈んと云。則教
24 能様尓志遣れ者゛。あん能ごとく。輙取天是をくふ。其ごとくたとひ
| 万治版 伊曽保物語 現字体仮名
01 はつと云伝るごとく也。田舎にては事たらはぬ事も侍れ
02 共。かゝるきづかひなしとなん申ける。其ごとくいやしきものは。
03 かみつかたの人に友なふ事なかれ。若しゐて是を友なふ時は
04 [。]いたつがはしき事のみにあらず。たちまちわざはひ出来へし
05 [。]貧をたのしむ者は万事還てまんぞくすと見えたり。かる
06 がゆへにことわざにいはく。ひんらくとこそいひはんべりき
07 第十九 きつねとわしとの事
08 或時鷲。我この餌食となさんがため。狐の子をうばひ取て
09 。とびさりぬ。狐天にあふぎ地に臥てなげき。かなしむといへ共
10 。其かひなし。きつね心におもふやう。いか様に鷲のあたには。煙に
11 しく事はなしとて。柴と云物を鷲の巣の本に集て。火を
12 付ければ。鷲の子ほのほの中にかなしむ有様誠に哀にみえ
【伊曽保中 〇廿一】
13 にける。其時鷲。千度かなしめ共かひもなし。終焼落されて
14 。忽狐に其子をくらはる。其ごとく当座を我。かつてなればと
15 て。下さまの者にあたをなし。[立事]なかれ。人の思ひの積ぬれば
16 。終にはいづくにか。可^遁高堤も蟻の穴より。崩初るとなん云ける
17 第二十 鷲と。かたつぶりの事
18 或時鷲。かたつぶりをくらはばやと思ひけれ共。いかん共せん
19 事をしらず。おもひわづらふ処に。烏傍よりすゝみ出て
20 申けるは。此かたつふりほろぼさんこといとやすき事にて
21 侍る。我申やうにし給ひて後。我に其半分をあたへ給はゞ。教
22 奉らんと云。鷲うけがふて其故を問に。烏申やう。かたつぶり
23 を高所よりおとし給はゞ。其から忽にくだけなんと云。則教
24 の様にしければ。あんのごとく。輙取て是をくふ。其ごとくたとひ
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