ESOPO NO FAVLAS.

0.08 (風呂のこと) 416.16--417.16

 ある時またシャント エソポに「風呂に()い て人の多少を見てこい」と遣らるれば、風呂へ行く路次(ろし)で 宿老「我はどこへ行くぞ」と問うに、「身は存ぜぬ」と答えたれば、その人「これは狼藉至極なやつぢゃ」と言うて、すでに牢者(ろ うしゃ)に為そうとするところで、エソポが言うは、「わたくしが只今知らぬと申したことは、かように牢者せら りょうことを弁えなんだによって、知らぬとは答えてござる」と言うたれば、そこで人々も大きに笑うて赦いてやれば、それからエソポ風呂に 行って見るところに、その風呂屋の前に鋭な石が一つ出てあったが、出入りの人の足を破り、傷をつけたを ある人がかの石を取ってかしこに捨てたところで、エソポこれを見て立ち帰って、「風呂にはただ一人(い ちにん)いまらする」と言うたれば、すなわちシャント喜うで風呂に()ろ うと赴かるるに、人がこぞって足を踏み入りょうずる所もなかったによって、シャント エソポに(い か)って言わるるは、「おのれは風呂にただ一人(ひ とり)あると言うたが、この群集(くんじゅう)は 常よりも多いは 何事ぞ」と、エソポ「この風呂屋の入口(いりくち)に 尖った石があって、出入りの人の(あた)となっ たを たれも取り捨ていで人毎(ひとごと)に躓き 倒るれども、顧みなんだを ある人一人(いちにん)き て取って捨ててござれば、知分(ちぶん)の程のた だ一人(いちにん)なことを申した」と答えてお ぢゃる。


ESOPO  p416  p417


・類話などについて

Ernest Griset  p176 人と石
 ある日イソップは主人のクサントスに、公共浴場に人がどのくらいいるか見てくるようにと言われた。イソップが見に行くと、風呂に入ったり出たりする大勢 の人たちが、入り口にあった大きな石につまずいていた。すると、ある分別のある男が、その石を取り除いた。
 イソップは家に戻ると主人に、「風呂にはたった一人しかいませんでした。」と言った。そこで、クサントスが風呂へと行くと、風呂は人で溢れ返っていた。 そこでイソップに、「なぜ嘘を言ったのか」と詰問した。するとイソップは、石を取り除いたのはたった一人だけだったので、その他は人と呼ぶに値しないと答 えた。

トルストイ寓話 6.12 主人と下男  やまむら ゆき訳 新読書社
 となりの主人が下男をよんで言いました。
「あそこのけっこんしきに、どれだけひとがきているか、見てきなさい」
 下男は、でかけました。しきのそばに、丸太をおいて、かべぞいのもり土に腰をおろし、人びとがこやから出てくるのをまっていました。式がおわって、こや から出るときに、みんな丸太につまずいて、いまいましそうにののしっては、いってしまいます。ただひとり、おばあさんが、つまずくと、もどって、丸太をど けました。
 下男が、もどると、主人はききました。
「人がおおぜい来ていたかい?」
「たったひとりだけで、それも、おばあさんですよ」
「どういうことなんだ?」
「出入り口に、丸太を立てかけたんです。みんな、丸太につまずいたのに、どけようともしません。そんなことはヒツジでもすることです。でも、ひとりのおば あさんが、丸太をどけて、ほかのひとがつまずかないようにしたのです。そうするのは、にんげんだけです。このおばあさんが、ただひとりのにんげんなので す」
(トルストイの話では、下男は人々の様子を見るために、障害物の丸太を置いている。)

知恵の教え15『十箱の櫃』 (西村正身訳 渓水社)
彼女は杖をついて弱った足腰を支え、神を讃えて歩きながら、道をゆく人が足を痛めたりしないようにと道から石ころを取り除 けていた。

Cf.Type1832B* 少年が道端で何かを見ていると、聖職者が、「何を見ているのかね」。少年、「さあわかりません」。聖職者、「それはウマの糞ではないのかね」。少年、「ウ マの糞かロバの糞のどちらでしょうね」

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